ウラの目と銀杏の村【公演終了・ご来場誠にありがとうございました!】 公演情報 キコ qui-co.「ウラの目と銀杏の村【公演終了・ご来場誠にありがとうございました!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    小栗剛の世界観が好きだ。
    それは劇団桟敷童子のそれに似ている。二つの劇団の違いはセットの豪華さだ。笑)、だから今回のqui-co.の舞台に山々の銀杏の黄色や赤の枝葉のセットや里の風景が描写されたなら、それこそ劇団桟敷童子なのだった。しかし、そんな由緒ある劇団より上を行くのが映像だと思う。荒船泰廣の技術はハンパない。一度、彼の映像だけの作品も観てみたいと切に思うのだった。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    今回の舞台を引っ張るのは文句なしに清水と如月だ。この二人が絡むシーンはあまりないが、二人が放つパンチは水と油のように相反する不思議な力だ。

    物語は里に住む人間とアスレチックの森の奥、銀杏の山々に住む鬼のお話。かつて人々は里に住んでいたが、25年前の凄絶な事件、山の破壊事件によって状況が一変してしまう。

    山に落ちた飛行機事故が原因で消えた356人の子供達の死に様を目撃して生き残ったある一族の子供は「見透かしの子」と気持ち悪がられて里を追われ山に住みつき「鬼」と言われるようになる。鬼はドングリを食べ獣を喰らい近親交配を繰り返しながら少人数の社会を形成していた。

    ある日、一匹の小さな鬼が学校の鐘の音を聞きたくて里に降りてきた。この鬼をウラという。ウラと目を合わせた子供は言葉を話せなくなるという。そんな折、ボーイスカウトの一団がキャンプ場の下見にアスレチック公園を訪れるも、鬼たちと出会ってしまった彼らは、山で迷子になってしまう。この場面での迷子とは鬼が人間をからかいながら追いかけまわし、恐怖に慄いた人間が命からがら逃げ惑うという鬼ごっこの場面だ。笑

    一方で人が踏み入ってはいけない神聖な場所から、やっとの思いで逃げてきたボーイスカウトのリーダーは、村役場で働くシン(松原)のもとに逃げ込む。このシンは人間側の鬼との交渉役で松原と言われる。鬼側の人間との交渉役はウズメだ。この二人の交渉役が後に人間と鬼との虐殺の場面での重要なキーとなる。

    ウラは人間の子供が教室で勉強している様子を見て自分も勉強がしたいと思うようになり、将来は学校の先生になりたいと希望するようになるが、一方で荒んだ教室や先生が半裸にされて授業をしている様子をも描写する。このようにちょくちょく里に降りてくるウラがきっかけとなって、やがて人間と鬼との殺し合いが始まってしまう。

    これを制止し、鬼と人間が仲良くなる方法を考えようと躍起になる「今の松原」のシン。新しい世界を作ろうとした矢先、村長はこの歴史の「アヤ」を絶ち民族浄化の為に鬼を虐殺せよ。との指示を発令してしまう。果たして人質として人間が預かっていた鬼・ひばりの命も危うくなる。


    ウラの動き、スピード、人間の目を覗きこむ仕草、どれをとっても完璧で素晴らしいキャラクターだった。鐘のような響きの導入音楽もこの舞台で十分に生かされていたと思う。終盤の展開は涙が出て悲しいやら悔しいやらで、すっかり物語に入り込んでる自分が居た。
    ちょっとだけアングラの香りが加味された妖しくも美しい物語だと思う。鬼と人間を繋ぐ神聖な遣いのシンのキャラクターの立ち上がりも見事だった。強いて言うならもうちょっと本を解りやすくしたほうが万人受けするのではないか、とも思う。

    それでもやはり小栗剛の本は好きだ。

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    2010/10/12 18:39

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