Blue moment 公演情報 Theater Company 夜明け「Blue moment」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    1人の男 光(コウ)の人生を、フライヤーにあるバイクのタンデムツーリングに準えて描いたロードムービーならぬドラマ。時代ごとに 光のエピソードを描き、その生き様を時系列の回想録のように展開していく。タイトルにあるBlueが物語の肝。

    物語は 「記憶と夢の中」といった台詞から始まる。人生は選択と決断の連続、光は思い立ったら後先考えずに行動する。その結果が良かろうが悪かろうが、その捉え方は本人次第。その時代の心情・心境をテンポよく描き、次の時代へ繋いでいく。光という一役を時代ごとに複数の役者が担い、変わらぬ性格等は一貫しつつ、成長とともに違った面を巧みに観せる。

    舞台セットの高低を活かした躍動感、音響(エキゾーストノート等)・音楽(ビートルズ の曲 等)や照明の諧調で印象付ける。 何といっても舞台中央の重厚感ある「ロー&ロング」スタイルのバイクが迫力。
    ラスト、光の台詞が切なくも 救いになっているような…。今の若者、かつて若者だった人々にカタルシスをもたらすかのようだ。
    (上演時間2時間 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、左右から階段状にしたピラミット型で 頂上の下は出ハケの幕。その左右にも小さな幕。中央の出ハケを通ってバイクを出し入れ、左右の小さな幕は家の部屋であり秘密基地的な存在。天井は豆電球で夜空に輝く星。ピラミット型にした高低と、その前(客席寄り)を広いスペースにすることによって、上り下り、駆け回るといった躍動感を出す。それが、人生という旅(バイクが象徴)の疾走感を連想させる。バイクにうつ伏せている中年の男Kと不思議な少年との会話から始まる。この出会い、「星の王子様」(サン=テグジュペリ)を連想させる。

    当日パンフによると、物語は5つの時代「(幼少期~小学生編)(中学生編)(高校生編)(青年編)(夜明け編)」で、具体的な年代(1989年~2025年)まで記している。小学生の時に、光が見つけた父の浮気の証拠によって 両親は離婚。以来 女手一つで育てられた。中学時代は 初恋相手目当てで吹奏楽部へ、高校は 有名進学校へ1年遅れで編入学。高校時代に付き合った彼女の家庭は、或る宗教団体(統一教会?)に入信しており、結婚には反対。大学は音大を中退し 演劇活動へ。その活動は紆余曲折を経て、だんだんと軌道に乗り 忙しくなってきた。演劇を通じて知り合った女性と結婚したが…。付き合った女性は、年代順に「春」「冬」「秋」「夏」で四季を表し、人生の彩に準えた様な名前。

    妻が、劇団の男と一夜を共にしたことを告白、妊娠したが誰の子か分からないと…。バイクに乗って 暗転後、大きな衝撃音が響く。BlueはKに向かって言う、「お父さん、やり直したい時(代)はある?」の問いに、K=光は「ない」と答える。後悔のない人生だったのか、強がりなのかは判然としないが。恋に悶える者、自我と孤独な魂を持て余す者の心に響くような。

    轟くような重低音、眩しいライトを照らすバイクに乗って、会うことがなかった父と子が旅する回想は余韻に溢れていた。Blueが 見ることのなかった景色、それを父を通して追体験するようだ。風を感じてのツーリング…そして「風」は時代毎に色々な風が吹き、評判や悪評といった「風評」に変化していく。
    舞台技術は、ビートルズの曲や優しく癒すような音色、照明はスポットライトの多用で光の心情を強調する。演劇人の等身大の姿を抒情的に描いた好公演。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/06/02 00:08

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