気付かない奴は最強 公演情報 箱庭円舞曲「気付かない奴は最強」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    臭いが見える
    個々のキャラクターの匂いが
    観る側の肌に沁み込むように
    やってくる。

    作り手によって作りこまれた個性から
    さらに醸し出される世界の質感に
    ぞくぞくしました。

    ネタバレBOX

    物語自体はそんなに複雑なものではありません。

    キャラクター自体も
    奇をてらった設定をしているわけではない。
    役者たちのお芝居も
    そんなにバイアスが掛かった感じがしないのに
    一人ずつの匂いが
    観る側にまで沁み込んでくるような感触がありました。

    それは、キャラクターの表層をスルーして
    滲みだしてくるもの。
    台詞の端々から組み上がっていくニュアンスを
    役者たちがぶれずにまっすぐ積み重ねていくなかで
    じわりと観る側に流れだしてくるのです。

    しかも、その質感が一様ではない。
    粘土や色のつき方にしなやかな強弱があって
    観る側がひとつの感触として括れないようなところがあって。
    それらの重なりが
    匂いをひとつに塗りこめるのではなく
    互いを補色にするように
    それぞれを浮かび上がらせていきます。

    うまく言えないのですが
    キャラクターたちが抱える感覚が
    個性という範囲に収まらず
    人に括りつけられた「業」のようなところまで
    描きこまれていて。
    重ねられても交わらないそれぞれの人間のコアの部分が
    役者たちの奥行きを持った演技に支えられて
    観る側にしなやかに押し込まれてくる。

    そこから
    物語に描かれたルーズで
    きっちりと枠をはめることができないその組織に
    高い解像度を伴った空気の実存感が生まれる。
    個々の描き方の秀逸からさらに踏み込んで
    その組織のもつ建前と現実、
    さらには集団としての匂いが
    粒子レベルでくっきりと表れてくるのです。

    心地よいというのとは違うけれど
    観ていて引き込まれる。
    理屈を超えて、
    その世界に目を惹かれてしまう・・・。

    劇団旗揚げから10周年という
    作り手の底力をあらためて感じ
    その円熟に心を奪われたことでした。

    ☆☆★★★◎△△◎

    0

    2010/10/10 07:18

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大