Brother~another father~ 公演情報 “STRAYDOG”「Brother~another father~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    急死した父(享年63歳)の葬儀の日、兄弟と妹の奇妙な再会。説明にある「訳あり」が肝。途中まで兄弟妹の関係性が ぼんやり していたが、長男 藤沢夏雄が母からもらった手紙を読む(懐述する)ことで、はっきりしてくる。いや 表面的な関係は、当日パンフに登場人物の相関図があるから分かるが、物語は 真の意味で兄弟妹を実感するまでの過程を描く。それぞれの関わり方や関係性が じわっと伝わってくる感覚が心地良い。

    故人の遺骨や遺影の前での騒動、その笑い泣き叫び が観客の感情を揺さぶる。そして家族の思い出は、父が作ったハンバーグ、それが もう食べられないといった心残り 無念さが、兄弟妹の思いを熱く強くする。同時に、妻や親戚(義兄)との蟠りのような感情が溶けていく温かさ。少しネタバレするが、兄弟妹が一晩 同じ部屋で寝る、その時に見た夢の中で 全員がダンスをする、といったエンターテインメント性も高く 魅せる。そして上演前に流れているサザンオールスターズの曲が、後々 大きな意味を持つ。

    役者陣の軽妙洒脱な演技が、物語を面白くしている。1人ひとりの性格や立場、置かれている状況を会話の中でさり気なく説明していく。そして舞台となるのが子供部屋、その設定が実に巧い。妻や恋人との距離感や今の状況、その底流にある 子への愛しさ優しさが浮き上がるようだ。見終わって清々しく、そして優しい気持ちになれる珠玉作。
    (上演時間1時間35分 休憩なし)【Aチーム】 

    ネタバレBOX

    舞台美術は東堂家(夏雄の弟 友基)の子供部屋、といっても子供はいない。元々は夏雄たちが住んでいた実家。中央は 水玉模様の敷物に卓袱台、上手は 祭壇代わりのミニテーブルに遺影と鈴(リン)、100均の電気ろうそく。その横の置台に遺骨。後ろには縦長の収納棚や布団、そして縫いぐるみや滑り台などの遊具が並んでいる。

    物語は、夏雄と離婚寸前の妻 良江、そして恋人の仲村園美の3人が、不思議にも和気藹藹と話しているところから始まる。夏雄は、15歳で家を飛び出して職を転々とし、今は警備会社で働いている。そして東堂家に居候。父が 経営していた食堂キッチンハンバーグリルの後継者がいなく 維持費も掛かるため、取り壊しを計画している。解体を請け負った不動産会社の担当者 金山 愛、実際工事を行う解体業者 木下祐一(瑠美の兄)が早々にやってくる。

    亡き父 博史と母 花恵は離婚。花恵が店の従業員と浮気したのが原因。その後、花恵は別の人と再婚し 生まれたのが友基(母は再婚し金山姓、旧姓は東堂)。愛は花恵の浮気相手との間に生まれた子? のようで、3人は父親が違う といった複雑さ。ちなみに友基と愛は同い年。一晩を同じ部屋で寝た兄弟妹が語り合う思い出話。幼い頃 一緒に遊んだこと、父が作ったハンバーグの味など、懐かしさが込み上げてくる。

    不妊治療をしているが、友基と瑠美の間に まだ子供はいない。子宝に恵まれない家庭を描くことによって、改めて家族(血の繋がり)とは といったことを考えさせる。ダメ長男 夏雄、しっかり者(銀行員)の次男 友基、遠慮がちな妹 愛の、性格や立場を巧みに描き、深刻になりそうな兄弟妹の関係や心情を軽妙な会話で、面白可笑しく そして清々しく紡いでいく。

    亡き父が、よく聞いていたサザンオールスターズの楽曲 その中の「愛の言霊~Spiritual Message~」。夏雄はそれが愛の名前の由来になっているのでは と言う。父が誰なのか はっきりしないが、血の繋がりよりも 遊んだこと、食べた味など、共通した記憶が大切といった優しさにホッとする。よく聞く、”過去はやり直せないが、未来は築ける” を思わせる好公演。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/05/29 15:23

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  • ご観劇ありがとうございます。
    細部まで丁寧に作品世界を受け止めてくださり、心より感謝申し上げます。
    人物描写や構成、舞台美術、音楽などにまで深く目を向けていただけたことは、製作にとって何よりの励みです。

    本作は、血のつながりだけではない“家族のかたち”を描きながら、過去と向き合い、それでも前に進もうとする人々の姿を描いています。
    登場人物それぞれの関係性を、観客の方々が少しずつ紐解いていく構造を意識して創りました。
    その過程や感情の揺らぎを感じ取っていただけたことを大変嬉しく思います。

    また、夢の場面やサザンオールスターズの楽曲を印象的に受け止めてくださったことにも感謝いたします。
    音楽が登場人物の記憶や絆をつなぐ重要な要素であることを感じ取っていただけたこと、本当に光栄です。

    温かいご感想を糧に、今後も心に残る舞台を届けられるよう、キャスト・スタッフ一同努めてまいります。

    2025/10/20 10:45

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