湿ったインテリア 公演情報 ウンゲツィーファ「湿ったインテリア」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    前日Xに大量の絶賛感想が流れてきた。ネタバレしたくないため、観終わった後ゆっくり読もうと薄目でササッと飛ばしたが、たくさんの人が大感動していることが分かり、期待も高まり、開演1時間前に会場に着く。
     どらま館の階段を登って行った時に、かわいいお靴やスタイなど、赤ちゃんにまつわるものが並べられてて、世界観が始まっていてとてもいいなと思った。
     会場に入ると、舞台美術が織りなす世界観が素敵すぎて圧巻であった。ちょっと左寄りにお布団のような布がコの字を描いていて、脇にはぬいぐるみなどのゴミ袋、右脇には観葉植物やキッチン用品があり、生活感があった。テーブルの上のランプがめちゃくちゃ可愛くてどこのランプか気になった。上から吊るされるものが子供部屋にあるものが多かった気がした。右上に宇宙に見えるような、月やフラフープがあって素敵だった。

    ネタバレBOX

    さらに、まさか、布に映像が投影されると思っていなかったのでびっくりした。「湿ったインテリア」の文字が赤くて、少しこわい感じ(血っぽい感じ)も生々しくてよかった。
     照明も素敵だった。いろんな角度に照明があり、色も豊かだった。特に緑色の恐竜の影が白い布団に現れた時など可愛いと思った。夜のお散歩のシーンの真っ青な照明も素敵だった。
     音響も良かった。客入れの音楽もオリジナルなのか気になった。現実と非現実の間のような雰囲気の曲で素敵だった。スピーカー扮するそらくんや乗り移った(?)ジュウタさんと役者さんとの会話のシーンもとてもスムーズなタイミングですごかった。ある程度の尺の録音をしたものを、オペで流す感じなのか気になった。
     脚本が素晴らしかった。設定もオリジナリティがあるし、はじめは、チアがジュウタからタクに浮気的な感じで乗り換えたのかな?と思っていたが、途中から、ジュウタが亡くなったことを知って、認識が変わった。三者三様の親との関わり方が描かれつつ、それぞれが自分が親になる様子が同時に描かれていて面白かった。カキエがスピーカージュウタを抱っこして、真ん中で「やり直そうね」と言っていたシーンが切なすぎて涙が出た。「私のせい、私のせい」というカキエが、こどもを所有物のように認識している点では間違っていると思うが、それは翻って愛であるというところが、切なかった。カキエの妄信的な愛によって苦しかったジュウタがかわいそうでもあり、第三者としては、大きすぎる愛を持つカキエも愛おしく見えた。大きすぎる愛を持っていたカキエが自分の提案のせいで愛する息子を失った気持ちを想像すると胸が苦しくなった。カキエがタナコに「(息子を無くした気持ちを)お察ししますと簡単には言えないわ」的なことを言われたシーンで、「もう自分の中で整理がついてきているので大丈夫です」的な気丈に振る舞っていたところも切なかった。自分もまだ心の傷が回復していない時に、人に気丈に振る舞ってしまうときがあるので、その気持ちがすごく共感できたし、その時は大丈夫でも、後で一人になった時にダメージを受ける気持ちも分かった。タナコがタクのことを想って、今後のことを色々忠告するシーンを見て、自分もお母さんに言われるとうるさいなと思うことが多いが、実は的を得たことを言っていて、私のためを思って言ってくれてることを第三者目線で見ることで気づいた。終盤でタクの子かもしれないとタクが気づいた時に、すごくショック&ちょっとえずいていたように見えて、もしかすると、「誰の子でも関係ないと言っていた自分」→「でも実際、他人の子だと愛せないかもと思った自分」→「最終的に自分の子だった場合に、自分の子だったのに、他の人の子だと頭で考えて愛せていなかった自分(誰の子でも関係なく愛せると考えていた理想の自分との乖離:誰よりも自分が血が繋がっているかにこだわっていたのではないかと気づく)」によってそのような姿になったのかなと思った。私はこどもはおらず独身なのだが、2人だけで子育てするのは大変だなと思った。初めの方のシーンで、タクが「俺も心ぐちゃぐちゃで」と弱音を漏らした時に、チアが「私も体ぐちゃぐちゃにして産んだ」と応答していて、タクは体も心もぐちゃぐちゃなチアの大変さを優先し、色々気持ちを飲み込んで受け入れていて、そのパターンが多いように感じた。男性は産むことができないし、赤ちゃんと関わる時間も相対的に少なくなるから、色々飲み込まなきゃいけない場面が増えるのかなと想像した。ただ、自分は女性で、こどもを産んだ場合、絶対にホルモンバランスなどの影響もあり、優しくできない気持ちもすごく分かったし、掃除機をジグザグにかけられたら、更にキレてしまうだろうなとも思った。何が言いたいかというと、2人だけでぶつかりあった場合、逃げ場がなくて、どちらかが飲み込んで受け止める構図になるし、投げつけた側も自己嫌悪が出てきたり、大変になってしまうと思ったので、こどもを育てるなら2人だけにならない環境(実家の側など)がいいなと思った。(笑)戻ってきた(?)ジュウタが、ソファの上で「何も思い通りにならないこの世界やだ」みたいに喚いていたシーンや、大人である登場人物たちが子供のように泣くシーンを見て、「大人も大きくなっただけの赤ちゃん」というメッセージを受け取った。だから、うまくいかなかったら泣きたいし、世の中うまくいかないことだらけなんだから、全大人が本当はぐずりたいということも共感した。ここは、キャッチコピーである「親の泣き顔が幼かった」のところに通じるメッセージなのではないかなと思った。こどもを産んだら「親」という役割にはなるが、親も完璧な大人ではなく、こどもが大きくなった延長線上で、みんなもがきながらやっているんだなと思えた。ちょうど一昨日、友人が「こどもを持つかどうか、持つとしたら、いつ作るかどうかパートナーと話し合っていて、みんなどうやって決めるもんなの?難しすぎない?」と悩んでいたので、私としてはかなりタイムリーな話題であった。私としては、子供は自分で産んでって言わないから、子供が生まれること自体、親のエゴは絶対入ってくると思っており、かなり本作の思想に共感した。その話題から、こどもを生みたいかどうかは、考えるより感じるものなのではないかなと思った。たぶん考えたら、産まない方がメリットは多いと思って(たぶんジュウタの考え)、産みたいというのは、気持ちであり、理由は説明する時に後からつける気がした(チアの考えがそのように感じた)。ちょこちょこギャグ的な笑い要素が入っているのも好きだった。特に、ジュウタが収納めちゃくちゃ気にしてるところと、カキエがジュウタがそらくんに宿ったのは自分が呼び寄せてしまったからだと考え、叫びながら謝り続けるところが面白かった。
     役者さんが皆さん最高だった。まず全員会話が上手すぎて、素晴らしく、気まずい雰囲気や、セリフの馴染み方も半端なかった。圧巻だった。また、演じ手の年代の幅が出たことによって、表現の豊かさも広がったように思った。黒澤多生さんは、独特の空気感と会話力の高さがピカイチで、安定感がすごい。場の空気を変える力も強く、出てくる度に空気が変わるので、出てくるのをワクワクして見ていた。豊島晴香さんは、繊細な感情の機微に加え、会話力がまた高く、自然な演技が素晴らしかった。終盤のチアの実家に挨拶に行くシーンでの海を眺めながらの「最高にハッピーな家族になろうね」の後の返事の顔が儚さが入りながらの満面の笑みで心がキュッとなった。根本江理さんは、言葉に嘘がなく、心から全て言っているのが顔に出てて、やはり素晴らしい役者さんだった。もうタナコにしか見えないほどタナコですごかった。松田弘子さんは、心からの叫びが観客にグッと届くパッショナブルな役者さんだった。悪びれない大きすぎる愛を体現されていて、この物語の肝を担ってる感も感じた。藤家矢麻刀さんは、そのシーンの空気感を作り上げることがとても上手く、仕草などのディティールの表現がすごい上手かった。
     全体の座組の雰囲気として暖かさが出ていて、それは本橋さんが作り出す感じなのかなと思った。前回のメビウスも面白くて好きだったが、今回の湿ったインテリアはメッセージも優しくて繊細で大好きでもっと好きになった。
    アフタートークでまさかの本橋さんのお母様が登壇されており、お母様からの本橋さんへの愛が溢れており、それを恥ずかしがる本橋さんが作中に重なる部分を感じた。
    その話も含めて、私の中で本作が完成した。いい回を見れてよかった。

    ウンゲツィーファのこれからが楽しみでなりません!!!

    0

    2025/05/28 00:36

    1

    0

このページのQRコードです。

拡大