図書館より愛をこめて 公演情報 劇団傘泥棒「図書館より愛をこめて」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    図書館を舞台にして、若者の悩み揺れる気持を繊細かつ大胆に描いた青春物語。
    図書館が舞台というところが妙。居場所がない若者たちの背景、そこにある事情に優しく寄り添った話。同時に今 深刻になっている社会問題を潜ませ、中盤以降 サスペンス風にして興味を惹く。

    気になるのは、主人公2人の心情 その強い思いが描き切れていない。また無言 その間合いが長いこともあってテンポがあまり良くないところ。自分が観逃した 又は聞き逃したかもしれないが、いくつか説明不足というか伏線回収したのか分からなかった。しかし、全体的には優しく温かい感じの公演。
    (上演時間1時間30分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央に横長の本棚で上部に何冊もの本が並んでいる。上手/下手にも縦長の本棚があり、そこにも本がある。舞台になるのは図書館と近所にある喫茶店。図書館の場面はシンメトリー、喫茶店は 中央の本棚がカウンターになり、上手にテーブル席を設える。シンプルなセットだが、雰囲気は伝わる。

    物語は、雨の日に傘もささずに歩いていた高校生(3年) 馬淵碧に、図書館勤務(司書?)の白石知栄が「行くところがないなら、図書館においで」と声をかけるところから始まる。それから彼女が薦める本を読みだし…。図書館で 中学生の木崎明日香、明日香に勉強を教えている美大生の不破捺己と知り合う。また、知栄から近くにある喫茶店を紹介してもらい、そこでの談話。何気ない光景が 淡々と描かれる。

    ここに居る若者たちは、何らかの悩みや葛藤を抱えている。碧は春休み以降学校へ行っていない。その理由は、はっきり分からない。一方 明日香は学校で苛めにあっており登校しない。それでも勉強するため図書館に通い、解らない所を捺己に教えてもらっている。捺己は美大受験を失敗し続け3浪。親との確執にも苦しんでいる。そして 知栄も過去の苦しみを抱え…。碧は、知栄を慕い だんだん好きになっていく、そんな揺れる心が切ない。

    或る日、碧は図書館の本の中に拳銃を見つけてしまう。そこには暗号のようなメモが挟まれていた。ここから 突然サスペンス風になり、どう展開していくのか興味を惹く。実は、不破が アルバイトで使用するため隠していた。碧と明日香が協力して 暗号を読み解いて、事件に深く関わっていく。不破は、親からの自立や得体の知れない不安・不満を解消するかのよう。そこに闇バイトといった知らず知らずに犯罪に手を染める といった怖さを垣間見る。ちなみに、喫茶店マスター 畔一茂の正体は謎(医療的処置やあの場所へタイミングよく現れる等)。

    主宰 山野莉緒さんが当日パンフに「図書館は時間が止まっている。ただ止まっているのではなく、降り積もっている」と、もちろん知識のことである。ペーパーレス化が言われ 電子書籍も現れているが、それでも紙媒体の本はある。図書館は時代を超越した親近感がもてる場所である。同時にその時代特有の香りがあると思う。それが(話題)本はもちろん、新聞や雑誌などの情報である。

    公演は、観る人によって 過去であり現在なのだろう。自分の生活と地続きで共感もしくは反感、そんな物語が描かれている。そして、人生の或る瞬間の刹那的な心の交流、そこに社会(時事)的なことを絡める巧さ(劇的効果も含め)。
    舞台技術…雨音や踏切警報機などは、敢えて台詞に被せるなど音響効果は好かった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/05/25 15:18

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