高尾山へ 公演情報 さよなら人生「高尾山へ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    倉田大輔氏と市原文太郎氏は大学時代、登山サークルで一緒だった。市原文太郎氏が突然辞めてしまってそれっきり。20年以上経ったある日の午前、新宿紀伊国屋近くの喫煙所で再会。どうにもお互い憶えているもんだ。特に二人とも予定はなかった。「じゃ、山行く?」「え?マジで。」高尾山なら新宿から電車で一本、一時間も掛からない。ほんの思いつきで40代のくたびれたおっさん二人の小旅行が始まる。

    役者が主催するだけあって役の振り分けが巧い。
    唇に個性ある役者を集めたようにも思えた。
    河村凌氏は身体ゲンゴロウの『ノストラダムス、ミレニアムベイビーズ。』の小学生役がインパクトあった。
    競泳水着の『暫しのおやすみ』でスター女優役だった鮎川桃果さん、天才新人女優役だった竹田百花さん。

    各シーンが書かれたカードをシャッフルしてランダムに捲ってみたような構成。捲る度に時系列が飛び、それぞれの関係性が更に深く掘り下げられていく。それを成立させるスピード衣装替えが見事。パズルのように嵌め込まれていくシーンがラスト、絶妙なステンドグラスを完成させる。

    何かどうしようもないやりきれなさに包まれて理由もなく涙ぐむ。今作を旗揚げに選んだ作家の感性にRespect。今これを観るべき人は必ずいる。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    ベンジャミン伊東とは人気バラエティー番組『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』で伊東四朗が生み出したキャラクター。デンセンマンと「電線音頭」が大ヒットした。

    倉田大輔氏は結婚13年、末期の膵臓癌。子供はなく妻には長年浮気相手がいることも知っている。それでも妻をどうしようもなく愛していた。
    急遽の山登りにスポルティバの登山靴とシングルバーナーを買った市原文太郎氏。長年勤めた制作プロダクションを辞めてきた帰りだった。
    一体何処に向かって歩いているんだろう?

    多分このホンの底流には岩井俊二の『Love Letter』が流れている筈。時空を超えた想いが伝わるラスト。ここが重要で現在と過去が気持ちによって一瞬で繋がる不思議。それは昔好きだった曲を久し振りに聴いた時の感覚に近い。一瞬であの時の切実な想いが甦る。

    アンジー「ゆきてかえらず」

    へとへとに疲れてるから見つけないで 本日は音静か
    想いは御空を越えて彷徨ってた 過ぎた日は帰らない
    哀しみの墓を建てては掘り起こして 幾らかは生き延びた
    粉々の出来事全てかき集めて 肩の荷がまた増えた
    強く掴んでも握り締めても手の中に残らない

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    2025/05/24 14:31

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