驟雨(Syuuu ) 公演情報 劇団芝居屋「驟雨(Syuuu )」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    劇団芝居屋の公演は、さすがの安定感と余韻付け(照明・音響効果)。説明から、喪われた者と決して失わないものが 温かく優しく描かれている。
    ヘラ絞りを専門とした霧島製作所の社長 霧島旭が亡くなり、四十九日の喪が明け 形見分けをする日を描いた珠玉作。亡くなっているから旭は登場しないが、集まった人々によって その存在感を示す会話が紡がれる。大きな事件や出来事は起きないが、確かに そこに家族を思う父親の姿が立ち上がる。

    物語は、霧島製作所というヘラ絞りを専門とした会社、そしてタイトルになっている「驟雨」という設定と天候が肝。日本の産業は、多くの中小企業・零細企業で成り立っている。霧島製作所は、旭が大手の下請けから独立した経営方針を打ち出し、何とか事業を続けてきた。自分の家族はもちろん、従業員とその家族の暮らしを守るため必死に働いてきた。しかし その結果…。

    初夏、形見分けの日(夕方迄)の 数時間の話。少しネタバレするが、旭の長女 板倉竹子の父への恨み辛み、それが物語を動かす。親の心子知らず、逆に子の心親知らず たとえ親子であっても本当のところは解らないかも…。そんな微妙な心の襞をなでるような、言葉に表し難い感情を描いており上手い。
    (上演時間1時間25分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、霧島製作所の工具置き場兼休憩室といった所。上手に長テーブル その上にポットや茶碗セット、下の床には工具箱等。下手は工場へ通じる硝子戸。中央に折り畳みのテーブル2つと いくつかの丸椅子。全体的に剝き出しのコンクリートで味気ない。しかし タイトルにある「驟雨」、照明を諧調して 瞬時に上手の硝子戸を暗くし、音響で雷鳴と豪雨を表すといった効果。

    物語は説明にある通り、故霧島旭の財産分与前の形見分けで 家族が集まるところから始まる。この霧島製作所がヘラ絞り専門の零細企業というところが妙。そして亡くなった旭が大手企業の下請けから自立した ということが物語の背景にある。
    登場人物は6人…亡くなった旭の実妹 立岡公枝、旭の長男 松夫、その妻 佐知、旭の長女 板倉竹子、その長男 圭太、そして家族同然で技術顧問の高城遼平。

    長女 竹子は亡き父を嫌っており、高校も全寮制で早いうちに家を出ていた。小学生の時に母が亡くなり、男手ひとつで育てていた。その頃 父は、下請けから独立した経営方針を打ち出し、昼夜を問わず働いていた。そのため娘の学校行事などに行く余裕はなかった。一方、竹子は親が来てくれる友達が羨ましかった。その思いを吐露し慟哭する場面が圧巻。そして高専(全寮制)に通っている圭太が、霧島製作所へ入社したいと言ったことから怒りだす。勿論 竹子には内緒だった。帰ろうとする竹子を驟雨が足止めする。先にも記したが、親の心子知らず、逆に子の心親知らず である。父が残した形見分けの品は 段ボール箱1つで、中にはカメラ、アルバムそしてタブレット等。唯一の趣味が写真撮影で、タブレットには竹子の写真が多く収められていた。ちなみに 竹子が選んだ形見分けの品は老眼鏡(生活の必需品となり肌身離せない)、ここでグッときた。

    へら絞り、それは熟練した技術が必要で、劇中でも人材育成には何年もかかると言う台詞がある。さて 芝居屋のコンセプトを読むと、「役者に対しても、表現に対する新たな開拓を・・その努力や視線こそが 演劇が見世物に立ち帰るための原点である」と。その意味では、役者という人材育成に努めているといった姿勢が、この劇団の安定した芝居であり安心して観られる のだと思う。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/05/22 17:02

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