六道追分(ろくどうおいわけ)~第三期~ 公演情報 片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」「六道追分(ろくどうおいわけ)~第三期~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い。楽しんで観てもらう、そんなサービス精神(遊び心)に溢れたエンターテインメント作品。
    無宿として生まれた男と苦界に生まれ育った女の逃避行を描いた悲恋物語。どちらも不幸・不遇な身の上、その2人がひょんなことから一緒に旅をすることになる。旅の途中で出会った僧から「六道」の話を聞き、人の世の儚さと尊さを知る といった人情味ある内容。タイトルにある「六道」を物語に巧みに織り込んで、人の心の在り様 を考えさせる。自らが生み出した世界で生きているが、その現世は因果の道理に…。

    現世では悲恋であるが…公演全体は、笑いも交え小気味よく展開していく。少しネタバレするが、旅は江戸(吉原)から大井川までの東海道、その短い旅路が2人にとっての幸せな時間。華やかな雰囲気と非情な成り行きの中で、情感豊かに描き 観客の心を揺さぶる。また場面転換や心情表現にダンスを挿入するなど、観(魅)せる工夫も好かった。
    (上演時間1時間40分 休憩なし) 【第三期 剣】

    ネタバレBOX

    舞台美術、上手は 場景に応じて遊郭の障子や道中の石垣など、柱状の装置を回転させる。下手は 階段状の丘のような、その奥に朽ちた平板を組み合わせ、ラストは磔 処刑場。吉原へ通じる場所は、観てのお楽しみ。

    この演目は、2019年正月公演でシアターグリーン3館同時公演の1つとして観たことがある。その時は、BIG TREE THEATERの天井の高さを利用した2層舞台で、1階部はその場(土地)に足を着け、2階部は旅先を思わせるような時間・場所の空間の違い、その広がりを感じさせた。今回はBASE THEATERのため高さはないが、逆に 舞台と客席が近いため臨場感と迫力を感じた。

    梗概…清吉(通称・鬼アザミ)は子分の粂次郎、伊助、三吉(妻が病弱でいつか医者になりたい)と共に世を騒がせる”義賊”。いつしか守銭奴達を懲らしめる清吉一味は、江戸庶民の憂さを晴らす存在になっていた。しかし奉行所の取り締まりは厳しくなり、これを潮時と最後に選んだ場所が不夜城「吉原」である。特に悪どいやり方で暴利を貪る大店ばかりに忍び込む。一方、その店の花魁 お菊は 刃傷沙汰を起こし、足抜けを余儀なくされていた。そんな時、忍び込んだ鬼アザミ一家と出会い...。六道を彷徨う人達の、馬鹿馬鹿しくも切ない道中が始まる。吉原と東海道(大井川)を舞台に、人情味溢れる逃亡劇が始まる。清吉とお菊は旅を通じて、孤独を癒し凍った心が氷解していく、その過程を面白可笑しく描く。ラスト お互いを思いやる気持が 切なく感動を呼ぶ。

    物語の展開は分かり易く、気楽に観ていられる。内容的には追われる身であり、この先どうなるのか気を揉むといった面白さがある。この旅モノの場面を動かしているのが、舞台美術であろう。上手の柱状の装置を回転させること、同時に格子状の可動する衝立2つで、吉原遊郭か道中先か瞬時に分からせる。また、下手の階段状の段差を上り下りすることで躍動感が生まれる。小さい劇場(空間)を巧く使った演出が妙。

    華やかな雰囲気、それは出演者(特に女性)が吉原という場所柄、花魁姿の艶やかさを出し、旅に出てからは町娘に扮しての可憐さなど、いずれにしてもその”艶技”であろう。そして下っ端役人(岡っ引き等)の庶民感覚と、与力などの武士とでは考え方が違う。その意識の違いは、現代(農林水産大臣のコメ発言)にも通じるような…。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/05/21 16:42

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