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なんかの味
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公演情報
ムシラセ「
なんかの味
」の観てきた!クチコミとコメント
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曽根千智(10)
実演鑑賞
満足度
★★★★
ひとつの家族をめぐる結婚譚
ネタバレBOX
4人の俳優の間に揺蕩う台詞の隙間を縫って、濃密に展開される家族会話劇。実は本当の親子なのに互いに知ってか知らずか、という設定自体は王道ではあるのだが、大阪弁の薫と璃の少しだけ踏み込みすぎる親切心とのバランスで、シリアスになりすぎず、最後まで落ち着いて物語の行方を追うことができた。戯曲展開、情報量のコントロールが巧みであり、観客を最後まで惹きこみ引っ張る骨太な上演であった。
親子の間のわかりあえなさが切ない。「せめてここまでは分かり合えると思っていたのに」と期待したラインを超えて、相手のことが理解できなくなるときにどうしようもない寂しさを感じるのだと思った。どこまでも嫌知らずする父親にとうとう拒否する力もなくなって途方に暮れ、諦めるシーンの切なさは、誰もが似たシーンをかつて経験したことがあるからこそ、客席に深いため息が漏れていた。「相手の嫌がることを強行するな」は当たり前に思えるけれど、大抵の場合、それらは「自分がやらないでいることがストレスフルで落ち着かない」という事象の裏返しであり、父親はいつも最後は自分自身の方が大事であり、父親の気持ちが優先されるべきだというメッセージを発し続けている。このどうしようもない袋小路に、ギターは無力なのだ。
観劇中、取り留めなく過去の家族の思い出が想起される(観客として、一見本編とは全く関係のないシーンが脳裏に浮かぶのはいい上演だと思っている)。集中しているが、意識はどこかに彷徨うような緊張感の上演であった。完全暗転にせず、青光だけを残して逆光の中でゆるやかにシーン展開する照明演出は見事で、家族は嫌でも続き、縁は簡単に切れず、時空も歪まない、すべてが地続きでありそこで生き続けていくのだというしんどさを、身体感覚として舞台と客席一同に共有できていたように思う。登場人物が少なく、集中しやすい会話劇なので、小劇場演劇をあまり観たことない知人・友人も誘いやすい演目だと思った。
(以下、ゆるいつぶやき)
家族を扱う作品の難しさに、多様化しすぎた家族像を背景に共感ポイントを作りにくい点があげられ、作家自身が書きあぐねているのではと、現代作品を観ていると特に感じることがある。『なんかの味』では『秋刀魚の味』を下敷きにしたという公演前情報もあり、関係性が事前にある程度予測できた点がよかったように思う。離婚、離別、死別、虐待、介護など少なからず辛い記憶と結び付きがちな家族の課題について、過度に一般化せず、「それはさすがにないやろ」と突っ込んでしまいそうなくらい離れたところから徐々にフィクションの力を借りて深部に潜っていく作り方が、観客として見ている一個人として心理的に楽であった。
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2025/05/19 17:46
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