みんな幸せ 公演情報 友池創作プロジェクト「みんな幸せ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    サスペンス ミステリー色の濃いノワール劇。しかし 主人公 新井貴子の性格等もあって、それほど暗くはない。むしろカラッとしており滑稽さも感じる。
    説明にある「ある家のトラブルの話」であるが、その裏に隠された もう一つ話があるようで興味深かった。サスペンスといった要素が物語をグイグイ牽引していく。

    リフォーム業者の新井が巻き込まれた、富豪 篠塚家の内情が肝。舞台は 或る地方都市で、何となくありそうな設定が物語の背景にある。同時に家族内の立場や性格等が歪な人間関係を構築している。そこに それぞれの愛や正義があり、自己中心的な行動が暴走していく。誰と誰が敵/味方なのか、巧みに場面を繋ぎ展開していく。

    物語の底には壮大な陰謀が、そして足元では新井に対する深謀な企てが浮き上がる。表立っては やり難い偏見・差別や不平等といった意識、それを巧妙な手口で行使する陰湿さ。そこに或る歴史観の悲哀が滲み出ている。誰かの犠牲の上にある”みんな幸せ”にアイロニーが…。
    (上演時間1時間50分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、下手からHAPPYの英文字が不規則(一部逆さま)に並んでいる。始めのH字は大きく 劇中では暖炉を表している。いくつかの箱馬があるだけのシンプルなものだが、単純なHAPPYではないことを示唆。

    物語は、新井が篠塚家のリフォーム失敗の責任を取らされ 会社を辞めるところから始まる。篠塚家の現社長は、亡くなった夫の跡を継いだ未亡人 美晴。先代は再々婚で、初めの妻との間に長男 卓志、二番目の妻の連れ子で長女 真優、そして次男 悟と次女 円 という複雑な家庭環境にある。この会社、政府と共同でカーボンニュートラルに係る開発をしており、その関係もあり 真優は与党大物議員の息子と結婚させられる。いわゆる政略結婚。

    この地で 篠塚家から仕事を請け負うことは 色々メリットがある。卓志は刑務所から出所したところ。現社長との確執だけではなく、会社の陰謀ー開発しているのは細菌兵器ーを暴き阻止したいと考えている。新井は 篠塚家との商談契約を結ぶが、ひょんなことから会社の秘密を知ってしまい、葛藤の末 卓志に協力するが…。
    物語はサスペンス調であり、仕掛けた罠や それを逆転する展開をテンポ良く描く。次はどうなるのか、観客の関心や興味を惹き 飽きさせない。

    新井は離婚して、シングルマザーとして1人娘の大学生 希 を育てている。希は就職活動を有利にするため、あえて母と距離を置いている。母 貴子は在日二世か三世で、そのことを気にしている。これは貴子が勤めている、リフォーム業者の支店長の言動にもあらわれている。昨今、簡単には馘に出来ない、そんな事情を背景に差別や偏見を巧みに織り込み、幅と深みのある物語にしている。家族の諍いを描いているが、これを国の愛(主張)と正義(権利)に置き換えたら、理不尽で不条理な戦争そのもの。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/05/16 00:03

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