お針子マーチ 公演情報 さんらん「お針子マーチ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

     市田邸一階の八畳間での公演。八畳間の下手は廊下、廊下の左手のガラス戸を通して庭が見える。八畳間奥は中央に床の間、床の間の壁には掛け軸が掛けられているが水墨画ではなく、パンダ二頭がカラフルに描かれている。その手前には大小様々なぬいぐるみが幅いっぱいに置かれ、床の間下手は下段に小さな襖型の開き戸、上部は踊り場のようになっておりこちらにも並べられるだけ並べたぬいぐるみ。床の間上手は下段に収納用小型箪笥、箪笥上には貯金箱等、更に上部に本棚があるが並べてあるのは総て単行本の漫画。尚この奥の部分は畳部分より三寸ばかり高くなっている。尺は約40分。

    ネタバレBOX

     登場するのは縫製に携わる人々。社長と借金をして業者に高い手数料を払い日本にやってきた技能実習生三名の若い女性(内一人は熟練工)。仕事は本来シャツ縫製であるが、描かれた時代はcovid-19や不況の煽りを喰らって待機(即ち仕事無し)とタオルの縫製等単純で単価の安い高度な技術を実践習得することもできない仕事が圧倒的に多い。更に待機中は収入が無いにも関わらず家賃、光熱費等は実習生も負担せねばならぬのは、収入の乏しい社長もフォローできない事情が透けて見える。更に悪いことにこの工場に仕事を下してくれるタエ(個人名か社名かは不明)何れにせよポルシェで乗り付け若い技能実習生を食い物にしているファッションデザイナーは、若い実習生たちをもて遊んでは捨て、を繰り返している下種野郎。今回もその被害者が出て、縫製工場内部は大騒ぎである。今作はこの大騒ぎの有様を、実習生が暮らす寮を舞台に描く。
     日本の非欧米人以外に対する差別は、当にこの「国」の後進性を見事に表しているが、この傾向は所謂新自由主義が世界を席巻して益々苛烈になったことは否めない。即ちこれは何も技能実習生に対する仕打ちに留まらないということでもある。一時、勝ち組・負け組と二分割して騒ぎ立てることが流行っていた。殊に浮ついた者たちの乗降することの多い駅内では大声でこのようなことを得意気に騒ぎ立てる者たちを良く見かけた。無論、騒ぎ立てている連中も必死なのである。そんなことは言わずもがなではあるが、内実も伴わず否それ故にこそ、コンプライアンスだなんぞと騒ぎ立て、匿名で他人を非難し自らは恰も「正義」の監視役ででもあるかのような錯覚を起こしている人士も多い。その癖、そういう連中に限って卑怯な振舞い以外何一つ建設的なことなどやっていないように見えるが偏見だろうか? 大企業に勤めていようが、官公庁に勤めていようが職場に完全従属している人士たちなのではないか? 打ち破るべきはこのような奴隷根性であり、目指すべきは、ヒトがヒトとしてヒトらしく生きることのできるシステムの実現である。この長く険しい道を諦めずに追求し続けることこそ、ヒトが他のヒトビトと手を携え、地球上の総ての生き物の頂点にある存在として母星・地球を守り、未来を夢見ることを可能にする方法ではないのか? 今作の問題提起は、このような広がりを持ち得ると解釈した。
     因みに法もヒトが作るものである。そしてヒトは多くの間違いを犯す。法は万能では無いことが先の二文でも明らかだ。間違った法なら正さねばならぬ。

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    2025/05/15 16:29

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