赤目兎の罪悪感 公演情報 らくだ企画「赤目兎の罪悪感」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    誰もが葬りたい過去を抱えて生きており、その痛みを癒す そんな心を探す旅のよう。
    古事記「因幡の白兎」をモチーフに、人生の罪悪感を問う物語。説明にあるように、修学旅行先の下見のため 車を走らせていたが…。気が付いたら赤い目をした兎が現れて、「人生コンティニューしますか?」と問う。続けて「ここは黄泉の国の入り口ー黄泉比良坂だ」という。

    一般的に「因幡の白兎」では、嘘や欺瞞を戒め 親切で優しい心が大切だと伝えている。そして困難を乗り越えるためには、周囲の助けを借りることが大切で、自己中心的な行いは良くないといった教訓的な教え。この教訓的なことを教師1人ひとりが或る生徒との関りを通して罪悪感を告白していく。どうして この生徒と関わっていくのか、その謎めいた設定が肝。しかし、何故 教師がそれほど罪悪感を抱かなければならないのか釈然としない。だから「人生で最も愚かな罪悪感を正しく告白してください」、その追及に迫力を欠く。自分の感想は、劇作意図(対象者のこと)と反対かもしれないが…。
    (上演時間1時間20分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、白い車のフロント部分のみ。ナンバープレートは 「出雲303.わ.5 09」で、修学旅行先は出雲地方だと知れる。車の後ろに黒い箱馬が並び、高い段差を設える。その左右に黒い幕。全体的に昏い中で白い車体が浮かび鯨幕のようにも思える。それが黄泉の国といった雰囲気を漂わす。物語の展開に応じてフロント部分を回転させ、職員室や保健室の場景を表す。

    或る生徒の自死がキッカケで 修学旅行先を変更、その下見をする5人の教師たち。何故 修学旅行先を変更する必要があるのか不明。当日パンフがないため、教師(教科)と生徒の名前は定かでないが、台詞からサワワタリ(社会)、カラスマル(英語)、フクロタニ(国語)、イヌイ(体育)そしてコサカ(養護)、生徒はウサミ。黄泉比良坂にいて赤目兎の被り物をしていたのは ウサミ。つまり自死したのはウサミで、存命中に この教師たちと関りがあった。ここで言う<罪悪感>とは、主にウサミとの関りという限定された狭い中でのこと。

    ウサミは孤児院育ちで、里親に引き取られた。里親との関係は特に描いていないが、周りからは恵まれた環境と言われていることから良好のようだ。しかし、ウサミの気持は孤児院(仲間)での暮らしのほうが幸せ、その鬱積が自閉傾向になり 保健室登校へ。カラスマルは成績優秀なウサミを更に伸ばすため、イヌイは悩みごとは何でも打ち明けろ というが、それらはウサミの癇に障る。生徒1人ひとりの個性や考え方に合わせた教育は難しい、そんな冷静な教師がサワワタリ。実は 彼も孤児院育ちでウサミの兄貴的存在。

    公演では「因幡の白兎」の教訓は、前段ではなく 後段の”自己中心的”なウサミに焦点を当てているように思えた。そしてサワワタリの「教師を信じるな」は、過度に期待するなといった甘えに対する苦言のよう。罪悪感を知らず、黄泉の入り口で彷徨っていたのは、赤目兎ことウサミの方ではなかろうか。ラスト、黄泉比良坂の管理人ー赤目兎をウサミに代わってサワワタリが担うが、その役割は必要なのか?いくつかの不明や疑問が解けていないようで 気になる。
    登場人物は僅か6人、その役者陣の演技は確かで、1人ひとりの立場、考え方、キャラクターを巧く立ち上げていた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/05/12 05:26

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