いつかの日の 公演情報 こわっぱちゃん家「いつかの日の」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    劇団の活動紹介にある「ポップなくせに理屈っぽい《ロジカルポップ》を売り」、その真骨頂を見るような秀作。社会的な出来事と人間的な思いを巧みに織り込み、幅広く奥深く描いており観応え十分。当日は土砂降りの雨だったが、観に行って良かった。

    身近な所から現代の社会問題を点描し、そこで働く人々の寄り添いが解決の難しさを物語っている。今ある日本の現実と この先もしかしたら という仮想の出来事が巧みに繋がっていく怖さ。劇中の台詞「いつも通りを心にとどめておかないと、すり抜けてしまう」は、物語の芯を的確に表現しており印象深い。

    市民(人間)の切実な願い 思いは、なかなか叶えられないが、政府の思惑はあっさり憲法改悪してまで実行(施行)してしまう。ブローバル化社会において、いつ如何なることが起きても不思議ではない。自分で賢く考え行動することが求められるが、この物語の人々の立場・役割のジレンマが…。
    (上演時間1時間55分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術はシンメトリー、中央に半楕円形(U字型)のカウンター、その外側に各2つの腰掛。後壁は航空(市街)地図。全体的にスタイリッシュな感じ。

    舞台は、東京の或る市の市民課。物語は、女性が 婚姻届を受取り記入の仕方を教わっているところから始まる。女性が帰ってから、職員たちは なぜ一人で来たのか訝しがるが 深く詮索しない。次がLGBTQ+の悩み相談など、仕事は多義にわたる。そんな中、市の合併話が浮上する。平成の大合併を思わせるような展開だが、合理化/効率化といった市民しわ寄せではなく、前向きな捉え方。それぞれの市の特徴は、防災警備に力を注ぎ安心安全、合併相手の市は、民間会社出身の市長が財政基盤を健全化させている。市のスケールメリットはあり、現市長2人は新市長へ立候補予定。事前にビジョンを話し合うが、その中で”新東京市”として24区目を目指すと…。ここ迄が前半で、日常の暮らしに根付いた人間的なドラマが描かれている。

    突然 国が戦争に参加し、徴兵を地方行政に割り振った。市民課は出兵受付係も兼ね、さらに徴兵への補助金支給など、多忙を極める。また徴兵した人をどこへ配置するのか、といった心労が職員の心身を蝕んでいく。そして多くの死者が…。そんな中、両市にいた職員同士が結婚し、新市で働いていた夫が徴兵に応じ最前線へ赴いたが生死不明の状況へ。前半と打って変わり社会的、国家的なドラマへ変貌させる。平凡、小さな幸せは日常の足元にあると…前半と後半と通してそんな思いを抱かせる。

    市民課という身近な存在を舞台に、現代的な問題を点描する。冒頭の婚姻届は、女性同士の同性婚で日本の現行法では受理できない。続いてLGBTQ+の悩みを描き、問題の広がりと奥深さを観せる。現実に色々な考え方や意見があり、それを いくら虚構の世界(舞台)とはいえ、収斂することは難しいだろう。最近、立法や司法などで話題になるが、どう決着するのか不透明。また戦争の件、あっさり憲法改悪をして 参加するが、グローバル化社会にあって 無いとは言い切れない。直接的な戦火、悲惨な状況を描くようになってからでは遅い。その微妙なところまでを巧く描いている。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/05/03 11:20

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