六道追分(ろくどうおいわけ)~第一期~ 公演情報 片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」「六道追分(ろくどうおいわけ)~第一期~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/04/08 (火) 19:00

     片肌☆倶利伽羅紋紋一座の劇、第33回公演『六道追分』剣チームのバージョンで観た。
     片肌☆倶利伽羅紋紋一座、通称「ざ☆くりもん」というらしいが(以後くりもんと略す)、そのくりもん一座が今回は、今までありそうでなかった試み、今年の4~8月に掛けてのロングラン公演、更には、出る役者も1期、2期、3期、4期でそれぞれ違う上、2期目からは、座長(山田拓未さん)が主演しないチームで公演されることもあるということで、画期的で、斬新で、それぞれ劇の内容は一緒なものの、その期ごとに、また同じ月内でも、大きく2つのチームに分かれて役者が出ることで、アドリブや、役者の個性が違うので、公演ごと、期が変わる度に、違った印象を感じ取れるんじゃないかと感じ、その試みが面白かった。

     前回初めて観た、くりもん一座のBIG TREE THEATER(池袋グリーンシアター1大きな小劇場)での公演『冥土遊山』の際は、ファンタジーコメディ江戸時代劇ではあったものの、いまいち笑える場面も多々あったはずだが、劇場が大きかったせいもあるかも知れないが、役者との距離が遠く感じて、どこか客席と舞台の間に大きな見えない幕が下ろされて、仕切られているかの如くの距離感を感じた。
     なのでこの作品を観た時に、途中休憩が挟まったのもあって、劇の作品世界にいつの間にか引き込まれるといったようなことがなく、観ている途中度中で現実に引き戻され、大いに笑えなかった記憶がある。
     まぁ、内容が意外と悲惨で救いようが無く、シリアスな部分も結構目立っていたことも大きいかも知れないが。

     但し、今回の劇の『六道追分』では、ファンタジーでない上に、前回以上にかなり笑いに特化して、シリアス部分が無いわけではないし、どうしても、江戸の吉原遊廓を描く上で、悲惨な部分を描かず通る訳にもいかないので、そういった部分をちゃんと描きつつも、全体としては、吉原の大金盗んで逃げる鬼アザミ清吉を頭領にした盗賊たちと、流れ的に行動を共にして逃避行する羽目になる生まれも育ちも吉原遊廓花魁のお菊との凸凹コンビを中心にした、ドタバタ、時々人情なロードムービー喜劇で、旅の途中で出会う個性的でアクの強い人たちと出会いながら、さらに旅につきもののアクシデント(ゲリラ豪雨で川の水がこのままだと浸水)に見舞われたりといった、何が起こるか分からない珍道中ぶりに、腹が裂けんばかりに、普段のストレスや嫌な事が全て吹っ飛ぶほど、大笑い出来て良かった。
     それに恐らく、劇場が池袋グリーンシアター1小さいBASE THEATERでの劇ということもあって、くりもん一座の江戸情緒溢れる、馬鹿馬鹿しくて、騒がしくて、ドタバタ人情喜劇、笑って、最後は泣ける時代劇というコンセプトにピッタリハマると感じた。
     それに、こういう小さな劇場だからこそ、殺陣やダンスが臨場感に溢れ、音楽も含めてすぐそばに迫ってくるような錯覚に陥り、舞台と客席が非常に近いので、距離が感じられず、役者の演技を間近に観ることができるので、ちょっとした楽屋ネタやオーバーリアクションに大いに笑うことができ、劇に没入して、我を忘れることができるんじゃないかと考えた。
     大きな劇場では、大きな劇場ならではの良さや効果があるが、それ以上にこういった極小劇場ならではの良さを改めて実感した。
     それに、くりもん一座の場合、個人的には、役者やくりもん一座の世界観を狭い空間に最大限活かしきれていると感じた。
     但し、今後は大きな劇場で演る際にも、くりもん一座の江戸情緒溢れる、馬鹿馬鹿しくて、騒がしくて、ドタバタ人情喜劇、笑って、最後は泣ける時代劇というコンセプトを活かしきり、大いにに笑わせられるような空間造りができるようになるよう期待している。

     今回、剣チームでの念念(坊さん)役の吉田真綸さんと珍念役の馬場真佑さんとのコミカルで、坊さんたちな筈なのに、非常に現世的な感覚でのコミカルな掛け合いが面白かった。
     あと、念念役が鬼アザミ一味たちと花魁お菊に六道輪廻について詳しく、分かりやすく解説していたのが、大変勉強になった。例えば、仏教における天国や地獄、畜生道などは、実は人間誰しもの心に、大なり小なり潜んでいて、嫉妬や怒り、喜びなどといった形を取って現れる。つまり、皆が考えているような天国や地獄、畜生道といったものが極端で遠い世界、または空想の産物といったことでなく、もっと身近で、人間の感情や観念といったものと切っても切り離せない考え方だと知って、考えさせられた。
     剣チームでの遣り手役の太田有美佳さんが、遣り手役にしてはだいぶ若い人が演っていると感じて、驚いた。太田有美佳さん演じる遣り手は、見た目の怖くて、強気で、妖艶で、したたかな雰囲気で、声もドスの効いた低い声とは裏腹に、花魁や禿に対して、怖く、辛く当たってるようでいて、その実、意外と優しい一面が所々垣間見られて、悪役、憎まれ役と言い切れない、独特な味があって、憎み切れない人物造形になっていて、中々役から、役者の性格が滲み出てくるようで、印象に残った。

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    2025/05/01 01:53

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