幸せのかたち 公演情報 + new Company「幸せのかたち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    物語は、或る街のCafeを舞台に、何の変哲もない日常が淡々と展開する。2019年にも観劇しており、キャストは変わったが ”幸せ”をテーマに、恋愛模様を温かく、そして切なく といった思いは変わらない。傷つくことを恐れていた心の殻が ゆっくりと溶けていく、そんな優しさと 待つことの希望が…。それを店の従業員 まなみ の主観と常連客で小説家志望の客観を通して描いているような。その可笑しく滋味ある観察眼が妙。

    コロナ禍を経て、無関心・不寛容といった風潮が広がった気がしているが、物語は 逆に人との関わりの大切さを、色々な”幸せのかたち”を紡ぐことによって伝える。台詞にある「あなたが幸せでいることが、僕の幸せです」は、一歩引いた相手への気遣い。何となく気弱、遠慮しているような。幸せの捉え方は人それぞれ。例えば、映画「釣りバカ日誌」で、主人公のハマちゃんこと浜崎伝助が プロポーズする言葉ー「僕はあなたを幸せにする自信なんかありません。でも、僕が幸せになる自信はあります」と。

    「幸せ」は主観的なもの。人はどんなに愛されようが、裕福で恵まれた環境にいようが、本人が幸せを感じなければ、幸せではない。一方、相手(他人)が幸福かどうかまではどうすることも出来ない。相手を幸せに出来るか分からないが、少なくとも僕が幸せになる、勿論 相手が了承すればの話だが。物語は、泣き笑いといった感情を揺さぶるが、それを音楽と照明によって一層 効果的に演出する。少し気になったのが、前公演に比べメリハリが弱く単調に思えたこと。
    (上演時間1時間50分 休憩なし) 【TEAM Coffee】

    ネタバレBOX

    セットは、客席に対して斜めに喫茶店内を作る。上手側がテラスになっており、公演のテーマと言えるカランコエの鉢植えが置かれ、その後方に木が植えられている。中央にテーブルと椅子、下手側に店の出入口とカウンターがある。全体が2段ほど高く設えているが、店の周りは1段低くして街路イメージ。後景には豆電球が飾られ 星空イメージ。

    物語は店員 まなみ(加藤葉子サン)の観点で展開する。何の変哲もない暮らしの中に幸せがある、そんな足元を見つめた珠玉作。そして常連客 テリー(森原彩夏サン)が小説のネタ探しとして人間観察をしている。
    まなみは恋人が海外に行ったきり帰ってこない。それでも彼を信じて待ち続ける。一方そんな彼女に思いを寄せる郵便局員ビンさん、それから大学生の愛やすずの切ない恋愛話、タウンマガジンの編集者等が織り成すヒューマンドラマ。そして店に集う人々を優しく見守る店長、その店長にも辛い思い出が…。

    公演に温かみを感じるのは、思いを伝えるのが手紙という手段を用いているところ。インターネット社会では、メールという手軽な手段で伝達できる。送信し一定の時間内に返信がなければ落ち着かなくなり、場合によってはイラッとしたりする。スピードが求められる社会にあって、この公演は待つ=大らかな気持ちでいることの大切さを伝える。一方、近くに恋愛相手がいる場合は、直接 自分の言葉で素直な思い伝える。自分の気持を押し込め蓋をしない。大学生2人のそれぞれの恋愛模様に まなみが実直なアドバイスをするが、それは叶わぬ自分の身の上の裏返し。またラブラブと思われていたカップルが些細なことで喧嘩別れすることに。そこには相手を慮る気持が溢れている。愛、幸せのかたちは人それぞれ違う。
    店長は妻に先立たれ、2人の子供(兄・妹)の面倒を見ながら働いている。父に負担をかけないようにしているのか、兄は妹の面倒を見るという建前で小学校に行ったり行かなかったり。この兄・妹が亡き母の思い出であるカランコエの花に水を注す。子供や動物が登場する映画には敵わないと聞くが、この公演も子役の素晴らしい演技が光る。

    舞台美術も素晴らしいが、劇中歌や弾き語り 優しく流れる音楽が良い。人物の心情表現としてのスポットライト、暖色彩の諧調照明も心温まる雰囲気を表す。
    これら全てが喫茶店フユージョンでの出来事を小説に、その物語を劇中劇にしたような気もするが…。
    前回も記したが、カランコエの花言葉...「幸福を告げる」「たくさんの小さな思い出」「あなたを守る」「おおらかな心」、全てがこの公演に当てはまるような。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/04/26 00:07

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