地球は僕らの手の中 公演情報 劇団十夢「地球は僕らの手の中」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/04/06 (日) 13:00

     支店長になったその日に銀行強盗に入られた、不幸満載男の「ダーリン」。
    そして人の不幸が何よりも大好きな妻「じゅんちゃん」。
    責任を取って夫婦心中しようとするが、話は思わぬ方向へ進む。
    一方、銀行強盗をした「アニキ」と「サブ」は必死に逃亡。
    犯罪を犯すにはそれだけの理由があったのだ。(それだけの理由は、サブが謎の女達に噴霧状の睡眠薬を振りかけられ、意識を失っている間に組の軍資金が謎の女たちの怪盗団に組織的、計画的に盗まれたので、組のお金の分を銀行強盗で得た金で取り戻そうとなる)
    更に一方、ヤクザの事務所から大金を盗んだ「るい」「ひとみ」「あい」。
    3姉妹は成功の余韻に浸っていた。
    更に成功の余韻に浸って盗んだ金を3姉妹3人で分配しているところに、警官隊から逃げてきたヤクザ2人が、暫くの隠れ場所として、3姉妹を脅して居座る。だが、ヤクザの「アニキ」も「サブ」もお互いにこの3姉妹の内の2人と面識があり、お互いに言えない隠し事をしており、劇の途中で明らかになる。
     さらに劇の終盤「サブ」を裏切った「アニキ」、3姉妹を裏切った長姉が車で逃げるのを、2人の姉妹とサブが車で全速力で追いかけ、3姉妹の内の末っ子の持つ車で逃げてくアニキと長姉をアニキの車に次姉が崖付近で思いっきりぶつける。そしてぶつけられたアニキの車に急に飛び出してきたのが銀行支店長の妻じゅんちゃんと言ったふうに3組が一堂に返し、3つの話が一つの物語に繋がっていく様が余りに見事で、華麗で、テンポが良すぎて、トントン拍子に話が調子良く進み、回収されて行っていて、現実はこうは上手くは行かないだろうと思いながらも、笑える場面も多かったので、大いに笑えて、その調子良く、小気味良い物語展開にスカッとして、日頃のストレスも吹き飛んだ。
     しかも3姉妹が盗んだ金も、アニキとサブが銀行強盗で盗んだ金も、最後はちゃっかり意外な物語の最初に登場した1組の夫婦に全て持っていかれるという、そんなバカな、想定外で予測不能な、不合理だが良く出来た劇展開に息を呑み、観客の予想をも良い意味で打ち壊してくれ、途中のカーチェイスや騙し合いも馬鹿馬鹿しくも笑え、ドキドキハラハラのスリル感もあって良かった。
     そんな群像喜劇が、劇が終わる頃には狐につままれた気分にさせられた。
     笑いと緊迫感と馬鹿らしさ、全然先が読めない展開の均衡が見事過ぎて、感心してしまった。
     
     また、ベタな芝居がかった演技でなく、過度に誇張しない役者たちの素に近い演技が、返って信用して、まさかこう来るかという意表をついた終わり方過ぎて、ただ、ただ、唖然とさせられた。

     銀行強盗の場面やカーチェイスの場面や山間の崖に繋がる道路の場面、3姉妹の家の場面等で、能·狂言のごとくに大道具や背景、小道具を使わず、映像さえ使わないという(一部で大金が入ったバッグ2つや明らかに玩具の拳銃、ナイフが使われるが、それを除いて)在り方に、道具や映像を殆ど使わずとも、人の言葉や演技だけで、ここまで想像力を観客に膨らまさせることが出来ることに大いに感心してしまった。もっとも、表情力豊かで個性的、アクが強くてジェスチャーゲームで優勝できるレベルの身振り手振りで今どんな状況か、何を運転しているのか、どこにいるのかなどがひと目で分かり、よくできる粒揃いの役者ばかりで、物語も理解できるしと感心してしまった。決して美男美女ばかりではないけれども、完成度が高くて、なかなか見応えがあった。
     
     やはり演劇は、見た目の良い役者やアイドル、声優から引っ張ってきて動員稼ぎにやっ気になるよりも、無理に舞台狭しと大きな舞台セットや中道具、小道具、映像を最大限使って、観客の創造力を摘むよりも、背伸びし過ぎず、地道に公演を殆ど何も使わずに表現し、作品の魅力や純粋に役者の演技力だけで評判を呼び、人が自然と埋まる、こういった在り方の劇公演のほうが、至極真っ当だと感じた。
     まぁ、その代わり見た目や人気に頼れないし、舞台セットがほぼないし、場面を説明するものもほとんど無いので、観客の想像力に託された形となるので、説明的にならず、役者がどんな状況、場所かなどを観客が思い浮かべられるよう、さり気なく身振り手振りやちょっとした会話から分かるようにしなければいけないので、大変難易度が高くて、演技力も相当求められるものなので、役者にとって相当普通は磨かないと出来ない物だとは思う。天才を除いては。そう考えると、今回の劇団は笑いを自然に取るのも含めてプロの劇団の中でも高度な今どきなかなかいないプロフェッショナルだと感心した。

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    2025/04/07 01:44

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