美しい手 公演情報 スポンジ「美しい手」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    演出その他の構成も素晴らしい!
    初見の劇団ということもあり、また前情報(過去の評価)もないことから、期待してなかっただけに物凄い衝撃を受けました。とにかく素晴らしい。大絶賛なのです!現実と妄想の時間軸が交差する場面ではぐにゃりと歪んだずれが絶妙で、はたまた妄想から現実の世界に戻る展開はビデオテープが逆走しているような感覚の描写が巧みでした。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    物語はとあるジャズ喫茶での風景。セットがまさに現実味を帯びていて素晴らしい!

    生き馬の目を抜くようなファッションデザインの業界「アンダーグラウンド」ではデザイナーのカリスマ的存在の高崎を筆頭に業績を伸ばしてきたが、その裏ではデザイナーとして力のない井上が試行錯誤を繰り返しながら苦しんでいた。

    そんな折、ジャズ喫茶に訪れた同じファッション界の江尻にデザイン画を見てほしいと自分を売り込んだ井上は高崎のデザインをパクッた画を出してしまう。

    後日、高崎に呼び出された井上は高崎に詰られ罵倒された腹いせに高崎が大麻を吸っている事を暴露してしまう。「大麻を吸いながらデザインをしてるお前の方がよっぽどクソだ!」と言いのける。それを聞いていた喫茶店の客が記者だと知った井上は他言しないように頼むも、マスコミの餌食にされ高崎は留置所送りとなってしまう。

    罪悪感に苛まれながら苦しむ井上は、ついつい悪い方に悪い方にと妄想し捻じれ歪んでしまう。更に高崎が警察沙汰になってからというもの「アンダーグラウンド」の業績は落ち込む一方で遂に井上は解雇されてしまう羽目になるのだが、この時点でも井上は自分が高崎を陥れたという罪悪感からか、抵抗はしない。

    ところが喫茶店に集まった「アンダーグラウンド」の面々から高崎を警察にタレこんだのは一ノ瀬だったことが解る。一ノ瀬に掴み掛る井上。もう一方では江尻と揉み合う高崎と井上。このジャズ喫茶では血の気の多い連中が毎回、何らかの騒ぎを起こしているのだが、いちいちその設定が面白い。沸点に達した江尻は包丁を持って殴り掛かろうとするも包丁はサックリと高崎のギプスに突き刺さる。笑

    高崎を売ったのは自分ではないか。と罪悪感に苛まれた日々を振り返ると井上は自分が知らない現実はこの世に沢山あることに気付く。やがて井上はファッション業界から身を引き、まったく違う職種に就くのだが、井上がかつてデザインした蝉のTシャツを着た若者が井上をカリスマ的に扱う場面ではホッとさせる温度がある。

    そして、物語の最後の終わり方があまりにも素敵でため息が出るほどだった。

    今回の芝居で感じたことはキャストらの演技力が秀逸だったこと、須賀谷の照明が生かされていたこと、それに加味して演出が際立って素晴らしかったこと、更にこの物語を引き締めたのは店主・大熊役を演じた牧野はやとだと思う。彼の演技は出すぎず引きすぎずで、静かなパンチ力があった。

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    2010/09/27 14:04

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