視点 vol.1 Re:TRANS(MU×ミナモザ×鵺的) 満員御礼、審査発表をblogにて公開しました! 公演情報 視点「視点 vol.1 Re:TRANS(MU×ミナモザ×鵺的) 満員御礼、審査発表をblogにて公開しました!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    リリカルなアンサンブル。
    何かを表現したいひとがいて、それを見たいとおもうひとがいて、そういうひとたちがひとつの場所に集まれば、成立するよね?
    そんな風に演劇の原点に立ち返り、シンプルなことをスタンダードなスタイルとして広めていこう!というすてきなプロジェクト。
    複数の団体がひとつのテーマ性に沿って創作するというコンセプトを持っているため、多角的にひとつのニュアンスを味わえるおもしろさがありました。
    今回の作品群は、フラットな日常を操縦するアンバランスな自意識が感情のメーターごとふりきれてしまった時に溢れだす思いが出口のない闇をさ迷う誰かとシンクロした(かもしれない)一瞬に感じる痛みや余韻を丁寧に描いていたようにおもいました。
    作品ごとに印象に残った点を投票できますので、参加してる感がありますし、上演後の結果を知る楽しみも生まれます。
    人気のあるイヴェントなので会場は混みますが、座席の窮屈さを差し引いても行く価値はあるとおもいますよ。

    ネタバレBOX

    ■ミナモザ「スプリー」
    夜な夜な入院患者の骨を折っている精神科女医(木村キリコ)は、動機はあれど理由なき反抗を繰り返す。そんな彼女のターゲットになったのは、17才の女の子をバイク事故で轢いてしまい、自らも重傷を負った青年(宮川珈琲)。そして精神科女医と不倫関係にある青年の担当医(実近 順次)が織りなすドラマ。

    骨を折ることを正当化しようとするために、あれこれと御託を並べてめちゃくちゃな論理を振りかざす女医の暴走の切実さ。
    それを頭ごなしに否定できないまま、時々何気に共感しつつ正確にツッコミを入れていく青年がいい味を出していて。
    女医は、猟奇的なひとに見えにくい普通っぽさが人格ベースになっていたので、ひとつアクションを起こしたり、ほんの些細なひとことで精神があっけなく崩壊してしまう心の揺れが繊細に伝わってきました。

    中盤、女医との別れを切りだした青年の担当外科医が窓から投げ捨てた得体の知れないぐねぐねとうごく物体は、気色悪い女医の姿を投影化させているようで恐ろしく、その彼との関係性の後退がかえって女医と青年との関係性を進化させて、『あなたの痛みは理解できる。』という予感によって立場が逆転するばかりか、誰かを傷つけた罰を受けることで『赦し』を享受し、ひとつの世界にのみ込まれていく終盤が興味深かったです。


    ■鵺的 「クィアK」
    男婦の近藤史信(平山寛人)、彼を週一で買ってる木谷鑑(今里真)、木谷を過剰に愛する菅野紗代(宮嶋美子)それぞれのピュアに屈折した愛憎渦巻く作品。

    平面的で絵画的な構図から、徐々に誰かの背景が浮かびあがり、混沌とした時間の流れにのみ込まれていくような異世界が物語として立ちあがり、緊迫した空気が空間を満たします。

    序盤は女卑を中心とした場面が多く、息苦しさが伴いますが、真のセクシャリティを反発している感情をポーズ(代弁)をとるための、パフォーマンスという意味のある行為であって。これに相対する文脈としてアイデンティティの齟齬を克服するためにクィア理論の観点に基づいた便宜的/疑似的パフォーマンスをも踏襲したふたりが『痛み』と『赦し』によってひとつに溶けあっていくという点は、ミナモザのスプリーと繋がるテーマでふたつの作品がわたしのなかでひとつに重なりました。


    ■MU 「無い光」
    臨死体験ルポを雑誌で連載している後藤が連載の最終回のゲストに選んだのは同級生で人気イラストレーターの理英(秋澤弥里)。理恵に片想い中の同級生の修造(武田 諭)と、後藤のアシスタントの朝子(金沢涼恵)も加わって、理恵が不倫相手の家に向かう途中に自動車事故を起こした時に彼女が見た『光』について話を聞いていくうちに、後藤と修造のなかでも『死の記憶』が蘇って・・・。

    自分の気持ちを誰かに話すと気が楽になるものだよ。とはよく言うけれど、誰かに話せばはなすほど、自分の手から離れていって『物語』になる、という発想がすてきでした。
    ひとは結構その『物語』に救われたりするものだから。そこには夢も希望もあるのではないのかなぁ、と。
    そして、『希望の光』とは、みえるものかもしれしれないけれど、また見えなくなる可能性も残されているのならば、光なんて無いモノなんだ。っておもうことにして生きて行くほうがずっと気楽なんじゃないの?っていうメッセージもとても心強かったです。
    小ネタでは、ドナーカードのように遺書を携帯するのがトレンディにな・・・らないあのギャグセンスは突き抜けていて最高でした。あと、理英が10年前に借りたCDとか本を後藤に返す時マイブラのラブレスが入ってたのは個人的には胸キュンポイントでした。笑

    傷ついている誰かと誰かの闇が呼応する・・・というのは3作品とも共通する認識だったようにおもうのですが、この作品ではお互いが傷つけあっているわけではないので、最後は『赦し』をこえた『願い』がきれいな弧を描いているように感じました。

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    2010/09/22 11:12

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