満足度★★★★★
ゲイ・スピリッツ
夏前に学校で観劇したこの演目がすばらしかったのだけれど、その時は書き込むスペースがなかったのでこちらに書き込みを。
軸は変わらないだろうが、まだ模索中らしく公演を重ねるごとにスタイルが少しずつ変化しているらしい。
自分が観た時は、一人の演劇人の演劇とジェンダーにまつわる実存が、観客席側にいるはずの見えない相手との対話として、ユーモアも交えながら丁寧に語られ、表現と自分と身体の関係までを描いていた。
つまるところは語らざるをえないものを抱えた人間の「私語り」であって、それゆえ非常に強い舞台。人によっては視野が一変する体験かもしれないし、また人によっては混乱を招く体験かもしれない。けれどこれを観てどんな感想を持つにせよ、まず観て知ることこそが大切なのだと思う。
そしてこの演目に関しては、真摯に真っ正面から向き合っているからこそ、固定観念の糸に絡めとられている者にさえ一つ一つ対話していくことを諦めない度胸があるように思う。
また、語るべきことを持たない演劇作品が多い中、語らざるをえないものを語る手段としての演劇の有効性をしなやかに観せてくれたという意味でもすばらしいものだと思う。
これからももっとあちこちで上演してもらいたいし、多くの人に一度はとにかく観てもらいたい公演。応援しています。