聖地 公演情報 さいたまゴールド・シアター「聖地」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    地続きの「境界線」
    9月は、「自慢の息子」、そして「聖地」と松井ファンにとっては狂喜乱舞な
    月となったわけですけど。 それ、私にいえることなんですけど。

    「聖地」は「自慢の息子」と若干テーマを共有しつつも、結末は全く正反対の
    印象でしたね。 向こうが「冷」なら、こっちは「暖」みたいな。
    正直、松井氏の作品から「暖色」の印象を受けるとは思わなかったので
    何か別の作者の作品を見てるような気持でした。 

    作品全体を通じて松井氏の意外な振幅の広さ、そしてそれに対する
    演出の力を感じました。

    勝手が違う作品を前に健闘以上の調理を見せた蜷川氏、そして
    長丁場の舞台に耐え切った劇団員の皆様には本当に感謝。

    ネタバレBOX

    場内に入って、陽光を模した照明に照らされた瞬間から、もうお手上げでした。
    窓の隙間から差し込む眩しくて心地よい陽光、白を基調とした調度品の数々…。

    サンプルの薄暗くて風通しの悪そうな、カビ、蒸れてすえた匂いで
    充満してそうな雰囲気の舞台との余りの違いにショックを受けますね。。

    個人的には自分も年取ったらここに住みたい…って何十年先の話だ(苦笑

    ストーリーは、チラシにもあるように老人達がホームを占拠して
    「聖地」を築き上げる第一部までは割とオーソドックスに、しかも結構
    良い話な感じで進行するものの、地ならしを終えた第二部からは徐々に
    松井色が舞台を覆い始めます。

    さながら、普通の絵の上に徐々に歪んだレイヤーをかけていき、
    別の絵にすげかえてしまうように。

    第二部では、入居者の一人、認知症患者の瀬田さんにかつてのアイドル
    キノコちゃんが憑依、「聖地」の共同体の中心にいつの間にか入り込む。

    それとともに、「聖地」設立の目的、老人達が安心して過ごせる共同体、
    という触れ込みも徐々にキノコちゃんを中心とした、その体制保持の為の
    集まり、というものに侵食され、変質していく。

    ここで怖いのは、別にキノコちゃんが絶対的な権力者として君臨している
    わけではないんですね。 キノコちゃんを絶対視しているものもいれば、
    全然お構いなしにそれまでの生活を営んでいて気にしないものもいる。

    なんかリアル過ぎる組織図なので、逆に笑えてくる。

    徐々に話は進行し、本当にキノコちゃんが瀬田さんに憑依しているのか
    それとも認知症で生前のキノコちゃんと仲が良かった瀬田さんの狂言に
    みんな乗せられているのか、だんだん分からなくなってくる。

    その疑念が頂点に達した時、警察が踏み込んできてこの物語は幕を閉じる…。

    最後、その一連の物語でさえも、ある一人の老婆の死に際の夢で
    あるかのような描写がなされ(この女性が本物のキノコちゃんである可能性も
    あり、その死に際の願望・妄想が今作、という解釈もできそうだけど、本編では
    明示は無し)、静かに美しく暗転。

    結局、何が本当で何が偽りなのか分らないままですが、「自慢の息子」と
    違い、音楽や照明が暖かいんですね。 慈しみに満ちているというか。

    実際の蜷川さんは、暖かくて真摯な人だ、といわれているけどそれは十二分に。
    舞台の雰囲気も含めて、そこは松井氏との演出手法の違いをひしひしと
    感じました。

    全く性質が違う、しかも世代も違い過ぎる作家の作品をここまで
    自分の作品にした蜷川さんはやっぱり凄い人だ、と感じます。
    なにより、その新しいことをしようという勇気に惚れるし、尊敬。 

    …けど、公演のチケット、毎回高いので何とかして欲しい(苦笑
    今作はその意味でも感謝。

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    2010/09/19 20:03

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