トリオ 公演情報 NonoNote. 「トリオ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    小劇場で笑劇を至近距離で観て楽しむ、そしてラストは衝撃的な そんな洒落の効いた公演。劇中とは言え、1970年代の寂れた劇場の楽屋や音曲漫才の雰囲気が味わえる。3者三様の歌声が軽快なリズムに乗せてこだまする。何と無くではあるが、かしまし娘を連想してしまう。楽器を奏でながら面白可笑しい話、そして時事ネタを盛り込む といった話術が懐かしい。

    物語は 説明にある通り、舞台では息の合った漫才を披露する3人だが、楽屋へ戻ると日々 大喧嘩。原因は「トリオ」というあだ名の副支配人・鳥居一男の奪い合い。そして遂には刃傷沙汰へ…。表情豊か 誇張した演技が見どころ。小笑・爆笑など笑いの渦だが、時にオルゴールから流れる ゴンドラの唄がしみじみと。ちなみに この歌、大正時代の歌謡曲で、芸術座公演『その前夜』の劇中歌として松井須磨子が歌ったのは有名。自分は、映画「生きる」で主人公を演じた志村喬が この歌を口ずさみながらブランコをこぐシーンを思い出す。

    音曲漫才師の3人は、それぞれ苦労を重ねて生きてきた。そして やっと一緒になりたい男を見つけたが、それが何と皆同じという悲劇。ゴンドラの唄の歌詞は♫恋愛讃歌のような、たとえ気心知れた仲良しであっても恋の路は譲れない。そこに普遍的とも思える「愛情」と「生活」が滲み出ている。

    今回の演出は 武藤晃子女史。10年ほど前 この演目(LEMON LIVE vol.10公演)に役者として出演しているが、今回は演出を担当している。そして当日パンフには、NonoNote.主宰の璃音さんを称え、そして激励するような言葉を綴る。ノンストップ女3人芝居、そこに日替わりゲストが加わり、実に味わい深く紡いでいく。観応え十分、ぜひ劇場で。
    (上演時間1時間30分) 

    ネタバレBOX

    舞台はムーンライトセレナード新宿座の楽屋。前説はトリオ(ゲスト 植田健一サン)が店の法被を着て担当。舞台の近くに特別に作らせた楽屋。正面の壁には着物が掛けられ、中央の少し高くなった平台に炬燵。上手に楽器(ギターやアコーディオン)置き場、下手に黒電話。年代的に携帯電話がないため、この電話が重要な役割を果たす。

    3人は、Toshimi Saionji(小玉久仁子サン)、Ritsuko Sasanishiki(鈴木球予サン)、Orie Bando(璃音サン)、罵声 喧嘩のような会話から それぞれの境遇が分かってくる。問題は、トリオを巡る恋沙汰と この特別な楽屋を明け渡さなければならない状況、これらは姿を現さない支配人の胸三寸。さて、この劇場に長く出ているSaionjiは、ピン芸人であった頃、舞台の都度 衣裳替えをしていたため、この楽屋を作らせた。Sasanishikiはストリッパー、Bandoは売れない歌手といったところ。

    場末とは言わないが、この環境から抜け出して好きな人と小さな幸せを、そんな細(ささ)やかな願い。しかし、この面白可笑しい騒動には ある思惑が…。この公演、漫才的にはトリオを巡る騒動がフリ、どんでん返しがオチ、そして何事もなかった いや少し心境の変化がフォローのような、そんな滋味ある作品だ。

    本公演の内容とは直接関係ないが、 武藤さんが演じた時と今回とでは、個人的に意味合いが違うような気がしている。この10年間でコロナ禍の以前と以後、いつまた どのような災いがあるか分からない。少し大袈裟かもしれないが、コロナ禍(まだ完全終息ではない)で演劇を観るのは命懸け。この至近距離で大口開けて笑える喜び、それを ひしと感じる。それが 今を必死に<生きる>に繋がるような。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2024/12/21 00:21

    1

    0

このページのQRコードです。

拡大