アイツは世界を変えるらしい 公演情報 けったマシーン「アイツは世界を変えるらしい」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    闇に沈殿する謎。
    あのひとはイイひとそうに見えるけれどあぁいうひとに限って裏では恐ろしいことを策略しているのではないか、と頭のなかで勝手に悪いひとに仕立て上げるあの無邪気な悪意にも似た感覚が延々と続いていくようで、なんとなく後ろめたさを覚えました。
    物語は現実と地続きのようなことが起こるのですが、事の真相に迫ることにあえてウェイトを置かずに謎として残しておくことを意識しているようにおもえました。
    一見、どこにでもいそうな普通のひとびとも、どことなく本心がすっぽりと抜け落ちている感じがなんだかとても不気味でした。
    全体的にスローペースで話はすすみますが独特の照明の使い方が不思議な間合いを生み出していました。

    ネタバレBOX

    NPO団体・創造開発都市の一億円を着服した女が逮捕された。
    逮捕されたのは、TV局でADの仕事をしている金山の大学時代の元恋人・アユミ。
    彼女は無実でありながら、犯人に仕立て上げられてしまった。

    アユミのニュースを報道しているTV局につとめる金山はそのことに気が気ではなかったものの、大学の卒業を目前に控えたある日、踏切前で彼女にフラれた記憶を糧にして、仕事と割り切り、連日連夜彼女のニュース映像を編集していた。
    しかし彼女への後ろめたさや罪悪感にさいなまれ、あの時彼女は別れを切り出さなかったと自分に嘘をつき、彼女の無実を証明するために、奔走…。

    そして真犯人は現市長の東別院だと判明した。
    彼は元々、創造開発都市事業部の局長で、発展途上国に趣き人道的支援を行っていたが実績をあげるために人身売買まがいのことすら行っていた。
    やがて政界に乗り出した彼は各報道機関に巨額の賄賂を用意し、印象操作を行った結果見事に当選。

    そんな政治と報道の癒着の実態が明らかになるのが先の事件。
    これに関連する事柄が、5年前から操作の及ぶとある通り魔事件。
    その真犯人は、金山と同じサークル仲間だった同級生・黒川のバイト先の先輩・日比野で、彼女は強い殺意を持って東別院を殺害する。

    彼女が殺意に駆り立てる動機や、東別院or秘書の本山との関係性がイマイチ見えにくかったのでその行動は突拍子ない感じに見えないこともなかったが・・・、
    そんな彼女のことを買い、商談を持ちかける聾唖のフリをしていたカメラマンの砂田。
    東別院の秘書であった本山は、市長の死をほくそ笑み、次期市長の座につく自身を想像し、より一層笑みがこぼれた。

    あらすじ書きからファンタジー色の強い作品を想像していましたので、現実的にありそうな社会派ドラマだったのは意外でした。

    白いテーブルに椅子が4脚という抽象的で簡素な舞台美術ながら、シーンごとに登場人物たちが立ち会う場所が異なる演出が巧みで引き込まれました。

    ひとつひとつのエピソードもよく練られていて引きつけられるのですが
    重要なエピソードが終盤に固まり過ぎているようにおもわれたのが勿体なかったです。
    全体的に情報を分散するだけで印象が変わってくるとおもいますし、時系列を乱していく構成にすると、『おとぎ話』っぽさがもうすこし出るような気がします。

    踏切前が世界を変える方法を象徴とする場所で、都合の悪いことは「なかったこと」に電車の音に紛れて記憶をかき消す着想や、群青色とぼんやりと浮かぶピンスポットを交差する幻想的な照明はとてもすてきでした。

    役者さんの演技と、キャラクター演出も総じてよかったとおもいます。特に印象に残ったのは、聾唖のフリをしているカメラマン役の益岡幸弘さん、自分を期待の新人と言い切る新人AD役の宮尾政成さん、ハイテンションで暴走気味な秘書役の望月智和(劇団LYM)さん。
    こういうひとは普通にいそう、な領域からほんの少しだけ抜け出す、さじ加減が絶妙でした。

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    2010/09/18 00:04

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