黙れ、子宮 公演情報 KAAT神奈川芸術劇場、韓国国立現代舞踊団「黙れ、子宮」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    未来人に「未来ではどんなお笑いが流行っているのか」と訊ねたらこの作品を見せられそう。未来のドリフ。曲に合わせて集団で踊るシーンは未来のダンスシーン最前線を見ているよう。まるで『時計じかけのオレンジ』。全く訳が分からないがきっと未来の若者には大受けなのだろう。

    韓国国立現代舞踊団からの三人は子宮(支援)班。
    上は銀色の宇宙服のようなへそ出しトップス、背中に小さな赤いマント。下はステンレスたわしのような銀色ゴワゴワのオムツみたいなパンツ。
    刺青筋肉質の父親(イ・デホ氏)が「ムクゲの花が咲きました」とだるまさんが転んだを始める。母親(ユン・ヘジンさん)は手足が長く人形のような肢体。三つ編みツインお団子の娘(イム・ソジョンさん)はコミカル。(右膝を桜庭和志のようにガチガチにテーピングしている)。御約束の寄り目。振り向く父親にバレないように動いていく笑い。突然マネキンのように倒れていく二人を慌てて抱きとめる父親。未来型ドリフ。寄り目、振り向く、硬直、倒れる、抱きかかえる、寄り目・・・。延々と続く謎のだるまさんが転んだ。
    両腕を鳥の翼のように斜め上に掲げる功夫の鷹爪拳に近い型が子宮のポーズ。一発ギャグとして秀逸。

    迎え撃つ日本人ダンサー達は金玉隊。
    赤と黄のデザインが入った青い宇宙服のようなつなぎ、腹のあたりがポッコリ膨らんでいる。金玉のポーズもある。

    「鹿児島おはら節」、福岡の「黒田節」などが使われる。
    「金玉のテーマ」は圧巻。

    令和の暗黒舞踏。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    父親が去ると母親はパンツの中に手を突っ込みチューインガムを三つ取り出す。娘と一個ずつ口にし、残りの一つを半分に割って二人で分ける。そして噛んだガムを互いに交換する。母と子の絆の表現らしいが、自分はKiss(唾液の交換)だと思っていた。
    「ラン」「パ」とテクテク歩いて行く。
    一つだけ穴の空いた白い巨大シーツ。捕まえた下島礼紗さんの腹の太鼓を叩きまくると、出てくるのがアメリカンクラッカーのような金玉二つ。
    金玉隊が腹のカバーを開けると中には装着された太鼓。でんでん太鼓のように金玉二つぶら下がっている。これを振りながら踊る「金玉のテーマ」が素晴らしかった。小野寺夏音さんが映える。
    別れた父親がシーツ越しに顔を浮かび上がらせて迫って来る。ラストは娘が鬼になってのだるまさんが転んだ。残るのは全く動かない母親だけ。赤い巨大な旗を振る娘。最後はキャノン砲(銀打ち)で客席に銀テープを発射。

    主宰・下島礼紗さんが5歳の時、父親のDVにより両親が離婚。元演歌歌手の母親と暮らしてきた。18歳の時、病院で医師から先天的に子宮がないことを告げられる。レントゲンに映った影が睾丸の可能性があり、その場合貴方は男性であると。自分のアイデンティティーが足元から崩れ落ちる衝撃。肉体的に自分は男だったのか!?結局、検査で睾丸は見付からなかったが検査結果を見るまでの間に感じた「揺れ」を今回ダンスとして表現したそうだ。
    いつもケダゴロの舞踏には拷問装置を用意して肉体的精神的イレギュラーなエラーをダンサーに課した。今回の拷問装置は極度に正確さを要求する振り。手の角度から何から過度に求めたという。アフタートークで主演のイム・ソジョンさんは「巨大な旗振りこそ拷問だ」と語る。かなりキツくて毎回湿布一箱消費しているらしい。

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    2024/12/14 16:24

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