実演鑑賞
満足度★★★★
ちょうど百年前のソ連(ロシア)の戯曲(大河戦争小説の劇化)による舞台だ。ロシア革命の時のウクライナのキエフ近郊が舞台になっているから時宜を得た企画ともいえるのだが、何せ百年前の話だから王党派などもでてきて、今も似たような権力構造はあるものの現代に引き寄せるのはムリというものだ。その代わり、この舞台には、演劇的スペクタクルがあって、そこが見どころだろう。
演出は、ここからこの劇場の芸術監督の仕事になる上村聡史で、もともとこのように大劇場の舞台機構を使うのはうまいものだったから、このロシア内乱の戦争の最前線をうまく見せてくれる。スペクタクルというと、映画やテレビの映像の世界と重なって、もちろん演劇は圧倒的不利なのだが、観客に深い感動を呼ぶ劇場(演劇)的スペクタクルと技術はある(レミゼのフランス革命、いくつものミュージカルの名場面(キャッツの「メモリー」)歌舞伎の宙乗りなどなど)もので、新劇系では最先端の舞台機能を持つこの劇場に上村聡史が就任したのは、これからが楽しみである。
今回は小手調べだろうが、始まって間もなく、舞台奥からフルセットのウクライナの将校の家の居間が劇場中央(前列10隻をつぶしている)にせり出してくるところなど、客席機構と連動しているからほかの劇場では出来ない技で(できなくはないだろうが、スペクタクルの効果が上がらない)、ここで演出家は、これは戦争ものだが、ホームドラマだよ、と言っている。
一幕が2時間、二幕がほぼ1時間で長いが、複雑極まるロシア国内内乱の物語をスペクタクルとともに絵解きしてくれた。飽きないがさすがになじみのない世界で客の入りは半分というところだった。まぁいろいろ注文が山積しているこの劇場もこれからは大きく変わっていきそうだ。くれぐれも自分のことしかわからない官僚は口を出してこの劇場を舞台に何度も繰り返した税金の無駄使いしないように。