☆御来場ありがとうございました☆ サマータイム、グッドバイ 公演情報 ガラス玉遊戯「☆御来場ありがとうございました☆ サマータイム、グッドバイ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    意地ということ
    南の島のゲストハウス「ムーンサファリ」のオーナー峰岸佐紀子を主軸にハウスで働く従業員や近所の若者、東京から逃げるようにやってきた妹・真紀との人間関係を描いた物語。

    個々の若者のそれぞれの胸の内を丁寧に描いた作品だった。今風の、現代人が抱えている欝の部分も描写し個人的には姉の佐紀子より妹・真紀の内面にいたく同感した舞台だった。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    ゲストハウス「ムーンサファリ」を上手く回していく為には地域での人間関係を構築していかなければ到底、商売も住むことも不可能な辺鄙な南の島で佐紀子は、地元の若者や、ご近所、従業員と家族のように暮らしていた。

    そんな折、妹・真紀が都会の喧騒から逃れるように突如、姉のもとにやってくる。どうやら何か問題を抱えて悩んでいるような表情だ。しかし、真紀は姉のゲストハウスに観光客よりも近所の人々が常に集まってくる状況に驚き、一つも安息出来ない。しかも真紀の心に土足でズンズン入ってくる入江の態度や押し付けがましい宿泊客・恵子もウザいし、何よりも客足が伸びない原因は従業員が働かずハウスが散らかっているさまが気になった。

    そこでこの状態や集客の為に改革しようと意気込む真紀だったが、千明の反発をくらい、挙句、ゲストハウスの所有者で土地の有力者の新垣からこの辺一帯を大規模な再開発に伴って大型ホテルを建設するので撤去してほしい旨を打ち明けられる。

    一方で「ムーンサファリ」では宿泊客の恵子が「ここで働かせてほしい。」と言いだし、従業員の千明はきっちりした働き方は自分に合わないから辞めたいと言いだし、佐紀子は慌ててしまう。この時の恵子の「自分は家族に必要とされていない。」と訴え報われないと思う感情が痛々しいし、千明の「適当にゆるく働きたい」という主張もバイトならではの正直な感覚かもしれない。

    要領のいい千明に対する明日香の「自分は何をやっても上手くいかない。」という欝な感情や、元銀行員だったという脱サラの経緯を話した入江の心の内や、「夫の事は嫌いでした。離婚を考えていた」と告白した佐紀子の心情が見事に冴えわたりこの物語により一層の深みを増していた。そして最後の〆は真紀の「退職します」という電話での決断だ。この物語は生きることにちょっと疲れた人たちが最後に見せる意地のようなものだ。

    一方で再開発に反対する女性映画監督・堤が「ムーンサファリ」に目をつけドキュメンタリー映画を餌にオーナー丸ごと巻き込んでいくさまはどのキャラクターよりも強かで鋭い。

    「宿泊客にこっちの価値観を押し付けてるだけ。単なる自己満足」という真紀のセリフを、新垣が同じように真紀にぶつけるシーンはなんとも苦い。


    物語の進め方はコミカルな部分と柔らかい描写の交差が上手い。キャストらの演技も安定していて十分に見応えのあった作品だった。そして何よりも、この舞台の特徴はたぶん観ている観客が共鳴できるところにあると思う。「あるある、そうゆうのあるある。解る解る、そういうのって重すぎる。ここまではいいけれどそれ以上は私の中に入ってこないで。」そんな曖昧な境界線のない感覚がズン!と心に沁みて響く作品。

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    2010/09/17 16:40

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