【ご来場ありがとうございました】みんなのへや/無縁バター【全ステージPPT実施】 公演情報 Aga-risk Entertainment「【ご来場ありがとうございました】みんなのへや/無縁バター【全ステージPPT実施】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    実験的な面白さ
    それぞれ1作品でも題材的にはじゅうぶん成立するものなので、2作品というのは観客にとってはおトクといえる半面、時間的な制約もあり、もったいない提供のしかたもいえる。今回は会場の特徴を生かした実験的な試みで、本公演とはまた違った楽しさがありました。よって、作品の完成度というより、番外企画としての視点で、評価させていただきました。
    冨坂友さんは、シチュコメを手がける劇団の中でも、私が最も期待する若手作家のおひとり。まだお若いのにセンスは抜群で、肩肘張ることなくシチュコメの王道を行く姿勢に注目しています。かなり自信はお持ちなのだろうが、悪い意味での頑固さはなく、「観客にどう見せるか」に腐心されているのに好感が持てる。
    将来が本当に楽しみです。

    ネタバレBOX

    「みんなのへや」

    当日パンフに、シチュエーションコメディについて、「確かに、広い舞台でしっかりした具象のセットが組まれていれば感心するけれど、それではこの表現が“持てる者”の表現になってしまう。金持ちのコメディになってしまう」ということが書かれていて、すごく共感した。実は、この夏、あかぺら倶楽部さんのシチュエーション・コメディを観劇して満足できたものの、舞台美術の豪華さに、このパンフに書かれていることと同じことを思ったので。
    昔、東京サンシャインボーイズの芝居を新宿のシアタートップスで観たとき、衣裳にもセットにも全然お金をかけていないのに、シチュコメとしては非常に精度の高いものを作っていて楽しめ、ああいう面白さをまた味わってみたいなーと思っていた矢先、文字通りシチュエーションコメディのスケルトンを見せてくれたこの企画にとても感心した。
    部屋もスケルトンになっていたが、会場の関係からか、玄関が非常に狭いのに比して、お風呂とトイレが広いなーと感じ、もう少し玄関の間口を広くとってもよいし、役者も動きやすいかな、と(まあ、こういうマンションも実在しますが)。
    ベッド脇の窓がベランダの設定のようだがちょっとわかりにくい。確かにストーカーの女性が下から登ってきたような仕草を見せたり、「靴が落ちてた」という大家さんの台詞があるものの、そういう表現の問題ではなく、女性が登れるくらいの高さのフロアなら、なぜ、登場人物が脱出を試みるときに玄関にばかり固執するのか、靴を持ってベランダから逃げないのかということが気になった。賢一(千代原徳昭)がベランダに降りる場面もありましたが。
    また、クローゼットやトイレ、風呂場での会話の声が大きいということも他の方同様、自分も感じました。
    アフタートークの説明によれば、このスケルトン芝居では、役作り以前の素の俳優を見せようという趣向もあったそうですが、携帯電話で出演していない役の俳優と話す場面、相手の俳優も携帯電話を持って奥に立っていたが、声を出さず、口を動かすくらいの仕草はしてもよかったかと思いました。
    泥棒の矢吹ジャンプが、ふだんファルスシアターで本格的シチュコメを演じているだけに、こういう実験的な芝居で観られたのが一味違い、嬉しかった。
    登場人物のなかでは泥棒が一番犯罪性が濃い人物なのに、弱い立場に追い込まれるのが可笑しかった。ストーカーの大久保千晴も、自分勝手ではちゃめちゃになっていくストーカーをキュートに演じていて印象に残る。
    優子の邸木ユカが大真面目に演じていてリアル感を出していた。この後、海賊ハイジャックに出演するというので注目したい。



    「無縁バター」

    「無縁バター」という題名が目をひく。お菓子やパン作りに欠かせない「無塩バター」を買う機会が多いもので、無塩と無縁をひっかけたこのタイトルに妙に感心してしまった。有名童話に出てくる虎さながら、たった4日間にあとかたもなく死体が溶けてしまったという設定が凄い。大学の考古学の実習授業で発掘作業をしていたとき、「甕に入れて土葬する」という島の出身者が、甕の中で遺体はドロドロに溶けて最後は水になるのだと話していたことを思い出してしまった。
    コメディというよりサスペンスタッチで、「真の孤独とは」に迫り、なかなか凝ったシュールなお話。債権回収業者の岩尾(望月雅行)が圧倒的な存在感でひきつける。大家さん役は「みんなのへや」と共通で、宮原知子が演じ、終盤の登場で、一見、荒唐無稽に思えるこのお芝居にリアリティーを与えていた。清掃業者の1人を演じる浅越岳人に若いときの小倉久寛を髣髴とさせる可笑しみがあり、シチュコメ劇団にはこういう劇団員が必要だと感じている次第。
    ラストは有名映画のパロディーのようだが、題名は知っていても映画のストーリーを知らない自分には咄嗟に意味が飲み込めなかった。オチは、誰にでもわかるものが望ましい。

    *パンフの出演者の今後の予定欄が「みらいのへや」という見取り図に書かれていたのが、心憎い。

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    2010/09/16 10:52

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