ポプコーンの降る街2024 公演情報 劇団大樹「ポプコーンの降る街2024」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    初日観劇、ほぼ満席。
    現実と夢想を交差させ、優しくも切ないファンタジー作品。それは心の彷徨のようでもある。梗概は説明の通りだが、その謎めいたことを記すとネタバレになってしまう。当日パンフによれば、本作は1992年 文化庁舞台芸術創作奨励賞佳作を受賞し、劇団大樹では2005年に初演したとある。そして20年振りの再演にあたり、新たなシーンを追加し更に深みが加わっていると。初演を観ていないから何とも言えないが、タイトルや説明にある「ポプコーン」が膨らんで弾けたような…映画を観ながら食べた記憶があるが、その懐かしき味わいと香りがするよう。

    登場する中で、名前があるのは探偵・野放風太郎と助手・タキ、それ以外は女・男・老人であり正体が知れない。この抽象的な設定が肝かもしれない。人物の過去や現在など背負っているものを明らかにしていない。唐突にして曖昧な出会い方、緩い関係性の中で謎を膨らませていく。そして絵画の人物とは という謎へ繋げていく。途中から だんだんと事情が分かってきて、言葉の端々から滋味溢れる物語が構築されていく。全体的に抒情的な印象だが、物語とその雰囲気を支えているのがアコーディオンの生演奏、とても好かった。

    コロナ禍を経て不寛容・無関心といった世の中になったような気がするが、本作は未練と想いが しっかり詰まっている。それは人間だけではなく身近な動植物に愛と情を注いでいるよう。少しネタバレするが擬人化した猫、そしてアンサンブルとして踊る姿が愛らしく、しかも力強いといった感じもする。そこに過去だけではなく未来が…。
    (上演時間1時間50分 休憩なし) 12.08追記

    ネタバレBOX

    舞台美術は、上演前にキャスタ付の衝立4枚、1枚はドアで他はレンガ壁。そこにHOTEL REGRETの看板が掲げられている。上手にはビールケースが積まれている。開演すると衝立を回転させ探偵事務所内の淡い壁とドアに変わる。要は外観と内装を表している。事務所内の中央にソファ、壁に女性の肖像画が飾られ、上手奥には桜の木、その幹は太く枝は天井を這うように伸びている。下手に演奏スペース。

    或る日、突然 サラダオイルを持った女が探偵事務所に入ってきて、風太郎に向かって「私の後をつけていたでしょう」と詰問する。自分をつけていた男の風貌と行動を並び立て事務所を出て行く。その女、壁の肖像画の女に似ている。それから頻繁に事務所に来るようになる。いつしか街に鳥籠を持った老人が現れる。しかし籠に鳥は入っていない。この鳥を探して旅を続けているという。

    女が、風太郎に20数年前の消印がある手紙を示し、差出人を探してほしいと依頼する。ここから風太郎と女、そして肖像画の女の関りが愁いを帯びて紡がれる。2人は高校の同窓生、といっても風太郎(20歳)は夜間、女(17歳)は昼間で会ったことがない。2人は同じ座席、風太郎が机に推理小説を忘れ、それを女が読み興味を持った。いつしか文通を、そして会う約束をするが…。その待ち合わせ場所に向かう途中で、風太郎はバイク事故で亡くなる。物語は風太郎の夢オチのよう。風太郎は女一筋だが、女は恋愛を重ね 結婚する。そこに生者と死者の愛情感覚の現実的な違い。

    風太郎の夢想の中に女が入り込んだのか、女も死んだのかは判然としない。ラスト 男がサラダオイルを買いに出たまま帰らない妻を探すよう 探偵事務所を訪ねてくるが 廃墟。物語の中で既に時間軸が狂っている。何となく〈浅茅が宿〉を連想してしまう。助手・タキは風太郎の飼い猫。既に20年以上生きている。一方 街に来た老人には生または小さな幸せ(青い鳥)を感じる。女が売春婦に身を落としても生きることが大切。同じ街で、死と生という人が抗えない宿命を描いている。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/12/05 07:01

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