メイジー・ダガンの遺骸 公演情報 名取事務所「メイジー・ダガンの遺骸」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/12/02 (月) 14:00

    メイジー・ダガンは本当に死んだのか?
    なんてどうでもよくなってしまうほど、彼女は歌って叫んでスコップを振り下ろす。
    このバランバラで一人ひとりがどうしようもなく壊れかけている家族は
    血まみれになりながら、どこでどうすればよかったのかを問い続けている。
    彼らが信じたのは暴力しかなかった・・・。

    ネタバレBOX

    灰色一色のキッチン、粗末な木のテーブルといくつかの椅子。
    上手には入り口のドア、下手にはストーブと冷蔵庫。
    正面奥には左右から木の枝が伸びていて、開演後にそれが揺れた時は
    驚いたのと不気味なのとで ”あばらや感”がMAX。
    ここでこれから壮絶な家族の黒いバトルが始まる。

    最初にブチ切れて喧嘩を仕掛けたのは母親メイジー・ダガンだ。
    長年夫の暴力に耐えて来た彼女は、自分の死亡記事を新聞に出し、
    娘のキャサリンはそれを見てロンドンから帰って来た。

    キャサリンは殴られる母親を見て育ち、愛する女性を殴ることで
    自分への愛情を確かめようとする。
    こんな風になったのは、殴られるだけの母親を見て来たせいだと思っている。

    キャサリンの弟は両親と同居しているが、言動からは障害があるらしいと感じる。
    生活力もなく現実に対応できない。
    人が死ぬプロセスに異常な関心を持ち、過去には姉が可愛がっていた猫を死なせたらしい。

    諸悪の根源メイジーの夫は今やただの飲んだくれで、女房と娘の憎悪の対象であり、
    最期は娘からさんざん暴行を受け、女房にとどめの一撃、スコップで殴られる。

    母親のブチ切れに始まり、他のコミュニケーション手段を持たない4人は、それぞれの方法で
    家族を威嚇し合い、常に「猫のやんのかステップ」みたいな戦闘体勢。
    激しい罵り合い、今さらの告白、それによる怒りのエスカレート、そして最後はやはり暴力。
    暴力で服従させ、自分への尊敬や愛情を測り、足りなければ殴り、
    足りていれば ”ではこれならどうだ” とさらに殴る、そうやって生きて来た家族。

    途中差し込まれる映像が効果的でとても面白かった。
    伝統的なアイルランドの家庭でよく掲げられるというイエスの絵画からイエスが抜け出て
    巨大なイラストとなって飛び回るところ、思いがけない迫力にびっくりした。
    と同時に、こんな暴力的な家庭にも、伝統的な神の絵が飾られるところに可笑しさを感じる。

    作品の解説にある「ダークな軽快さとシャープなグロテスクさ」という
    戯曲のタッチを楽しむ域に、とても私は達していない。
    ただオヤジを殺して初めて少し朗らかになった女房を見ると、本当にこれから
    3人で家族再生ができるんじゃないか、と言う気がするから不思議だ。



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    2024/12/04 02:58

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