正三角関係 公演情報 NODA・MAP「正三角関係」の観てきた!クチコミとコメント

  • 映像鑑賞

    満足度★★★★

    「カラマーゾフの兄弟」を下敷きに、父殺しの裁判劇(野田秀樹と竹中直人の一人二役の早変わりの繰り返しが面白い)の向こうから、何かが立ち上がってくる。

    父と息子が奪い合った女性グルーシェンカ(=長澤まさみのアリヨシとの一人二役)と、長男富太郎(松本潤=熱演)の婚約者・生方莉奈(村岡希美)の二人の女性が出てくるが、生方に当たる人物はドストエフスキーの原作にいたかどうか覚えていない。

    「大審問官」や少年コーリャの話はない。スメルジャコフもほんの端役になっているので、父殺しの犯人が誰だったのかは、原作を知らない人にはわかりにくいだろう。
    今回は隠れた大テーマ以外にも、戦争中の竹やりでB29を落とす訓練のばかばかしさとか、科学者の軍事研究の倫理問題、軍需物資の横流しなど考えさせる素材がちりばめられている。アリヨシの同性愛の告白もある。

    グルーシェンカは火薬につけた名前なのだという弁護士(野田秀樹)のツッコミがあり、男女関係・父と子の対立が、火薬・軍需物資をめぐる争奪とかぶらされているのも、今回の目立つ趣向である。生方と富太郎が婚約するのも火薬がらみのやり取りが関係しており、火薬の調達は、表面の父殺しの裏の重要なサブストーリーになっている。(結像が少し弱いが、でも最後の父殺しの真相で、生きてくる)

    「一粒の麦、もししなずば…。一粒の麦がもし地に落ちて死ねば多くの実りをなす」のアリヨシのセリフが序盤、中盤、終盤で繰り返され、大きな意味を持つ。が、戦争の大量殺戮を語るこの作でどういう意味なのか、考えなければいけない。
    12月2日夜に配信で鑑賞

    ネタバレBOX

    爆縮の火薬の仕掛けが早めにあり、光の公式E=mc2が出てくる。「長崎」という地名が中盤で出てきて、隠れたテーマがくっきりする。
    8月9日が日めくりをめくるように近づいてくるとともに、人形峠(火薬原料の硝石が取れるとは知らなかった。もちろんウラニウムが取れる)と日本の原爆開発に関わる威番(いわん)の話も進行する。ソ連領事夫人ウワサスキー夫人(池谷のぶえ)の(大声で)もらすソ連の思惑もあり、日米ソの三国の糸が絡んでいく。彼女の超越した大げさな演技は、日本とは異質な存在であることを語り、舞台の幅を広げる。

    最後に原子野に、赤ん坊を背負って立つ少女は「焼き場の少年」の写真を意識したもの。ロンドン公演に向けて、長崎を語る国際的イコンとして使っていたのだろう。
    花火で「みんなが空を見上げるとき人は幸せになる」冒頭が、原爆で「空を見上げた時、人々が死んでいく」ラストの対比がこの作品の骨格である。

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    2024/12/03 01:23

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