満足度★★★★★
かりそめの会話のなかから浮かびあがること。
今、ここにいることが誰かにバレると何かと都合の悪いひとたちがそれぞれの立場を守るためにタッグを組んで好都合になるように根回ししていくその場しのぎの嘘を嘘だと知らずに信じるひとと、嘘を見抜いたと確信するひと、リアル(真実)を知ってるひとたちのパズルのように入り組んだ騙し合い、誤魔化し合い、知らんぷりなどがトリッキーなモザイク模様となっていくのが心地よい『みんなのへや』。
一方『無縁バター』では、だれかと疎遠になってだれとも無縁になったとあるひとりのひとを通じて、人との関わり合いや、人としての在り方/生き方、やむを得ない嘘について再考させられた。
大がかりな舞台装置を立てこまないとなかなか醍醐味を味わいにくいと思われがちなシチュコメを、簡素な舞台装置を用いて役者の力と脚本の力、そして環境音と簡素な照明だけでみせるという離れ業はストイックでスタイリッシュ。
そしてただバカ笑いをさせるだけでなく、人間に潜むちょっとした悪意や闇、生きる限り逃れられない社会性についてコメディから切り込む作家のセンスがすばらしい。