実演鑑賞
満足度★★★
同棲していた元彼(増田知就氏)との別れから精神を患い、引きこもった主人公(重実紗果さん)。家から一歩も出られずスマホだけを世界との接点とする日々。元彼を吹っ切ろうと部屋の内装や家具を変え、全てを過去に。後は元彼の置いていった荷物、段ボール箱に入ったそれを処分したい。親友(野村明里さん)が定期的に部屋に飲みに来る。主人公を苦しめるのは自分自身の妄想で、唯一の武器も同じく自分自身の妄想だ。
一度観たいなと気になっていた劇団。
役者陣はそれぞれ独特な味がある。何か不思議な空気感を醸し出す。野村明里さんは何となく坂井真紀っぽくて気になった。表情の変化が印象的。
村上春樹の文体に村上龍のエッセンスを振り掛けたような。テーマは『妄想』。主人公はすぐに何でもスマホで検索しようとする。スマホに表示される正しさ=不特定多数の集合知性。現実感のないもやもやとした真実はどうにも掴みようがない。会ったことも話したこともない誰かとネットで繋がっている時代。本当も嘘も妄想もふわふわ浮遊して漂っている。自分の自分自身だと捉えていた意識の境界線が曖昧になっていく。デマが流布され意見がコントロールされていく。自分が考えて選んだ筈の答は本当に自分が考えたものだったか?誰かのコントロール下に立っているのではないか?会ったこともない人間と出会い何も確かめられないまま別れた記憶。それすら初めから妄想だったのか?主観だけの世界をそれぞれの『妄想』で繋ぎ合わせて暮らしている。無理矢理辻褄を合わせる言い訳をまぶしストーリーの形にしていく。それも嘘だろう。