ミッドサマーナイツドリーム・イン・インターネット 公演情報 エビビモpro.「ミッドサマーナイツドリーム・イン・インターネット」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    仮想世界の恐ろしさ
    ミュージカルとは書いてあったけれど、想像していた以上にミュージカル仕立てになっていたので驚いた。コーラスもそろっていて美しい。
    実生活でひどく傷ついた男女がインターネットの世界で出会い、再び傷つきながらも真実の愛をつかむまでの物語。育児ネグレクトや中絶・子殺しの問題も扱う。インターネット社会は互いの顔も見えず、相手のこともよく知らずに交信するのだから、思いがけないことにも遭遇する。他人事とは思えない身につまされる内容だった。

    ネタバレBOX

    人気ゲームの開発者として一世を風靡した男(古山憲太郎)は、自分のゲームに熱中して健康を害した少年が死んでしまったことにショックを受け、仕事を辞め、インターネットの仮想世界で「神様」として生きている。彼は妖精の世界と、生かされなかった子どもたちの世界を作っている。生かされなかった子どもの世界では、親の都合で生まれなかった子どもや殺された子ども、病気や事故で死んだ子どものキャラクターを再合成して成長させようとしている。
    妖精の世界では、実社会でさまざまな問題を抱える大人たちが、妖精となって楽園で生きている。
    そこにマミ(角島美穂)という若い女性が現れ、ティンカーベルの案内でインターネットの世界へ案内される。マミの願いは真実の愛を探すこと。mixiや2ちゃんねるを経て、妖精の世界にやってきて、そこで愛をみつけようとする。
    2ちゃんねるの場面は仮面だけでなく、用語を取り入れるとかで、もう少し面白く説明できたのではないかと思う。
    マミは優れた音楽の才能を持ち、留学から帰ってから誰の子とも知れぬ子どもを産んだ。ピアノのレッスンに熱中したさなか、エアコンのスイッチが切れていることに気づかず、赤ん坊を熱中症で死なせてしまった。深く後悔したマミは、自ら耳の鼓膜を破ってしまった。音のないインターネットの世界で真実の愛を探そうと、最後の望みを託していたのだ。やがて神様はマミを愛するようになり、実生活でマミを幸せにしてやりたいと思い始める。神様を愛するラナンシー(色城絶)はさまざまな罠を仕掛けて、2人の愛を妨害する。信用して心情を打ち明けている途中で別のキャラクターがなりすまして入れ替わり手ひどく傷つけたり、ウィルスを感染させる霍乱目的の妖精がいたり、役目を終えた妖精のキャラクターが抹殺される場面が、現実社会でも起こりえる場面だけに、恐ろしく感じた。
    マミは妖精の世界で実の兄のグレムリン(橋本考世)と出会うが、互いの正体はわからない。兄はやはり音楽の才能を持っていたが、両親はマミの才能のほうに注目し、集中して才能を伸ばしてやろうとしたので、兄は音楽の道をあきらめていた。
    「真実」の精(矢ヶ部哲)が神様の前に現れ、エアコンのスイッチを意図的に切ったのは兄であると神様に打ち明ける。神様はマミの子どもは兄との間の子であったと言い、自分は傷を背負ったマミを現実の世界で愛し抜くと誓う。
    古山は、傷を背負った男だからこそ持てる包容力を感じさせ、芝居を引き締めた。
    フィナーレで、妖精たちが現実の姿で現れ、並ぶところが印象的。妖精を演じていたときは、一種みんな化け物のように胡散臭いが、妖精の仮面を脱げば、みな、普通の人間なのだ。
    マミを助けるティンカーベル(でく田ともみ)と神様を助けるランプの精ジーニー(宮本翔太)だけは本物の妖精のようだが、するとネットでの存在の意味がわからなかった。
    死んだ子どもたちの世界の仕組みがいまひとつよく理解できず、「ロード・オブ・ザ・リング」のパロディのようだが、このキャラクター、フロド(しゃなちひろ)とサム(熊坂四歩))の存在が何なのかわからなかった。
    ムーミン(永田歩)が音痴の設定で大声でがなりたてて歌う場面が聞き苦しく、永田を見ていて気の毒になり、不要だと思った。
    最後に、ピアノを弾き続けていた死の妖精・バンシー(海ノ幸子)こそ、マミの傍に常に寄り添っていた「音楽」であったことが明かされる。
    出会ったのが仮想世界であっても、人は生身でなければ真実の愛や友情を育むことはできない、ということをこのお芝居は教えてくれている。
    「マミ」は「真実」の意味も含んでいるのかもしれない。


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    2010/09/13 19:26

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