実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/11/11 (月) 19:00
1973年夏に起こった「立教大学助教授教え子殺人事件」を題材にした「昭和事件シリーズ」の第5弾で、実際に起きた事件と犯人周辺、被害者周辺の人たちはこうであったのではないかという虚構とが良い按配で絡まっていて、まるで事件の前後を眼の前で目撃したかのような臨場感と、犯人がすぐ近くにいるのではないかと感じさせる演出方法、こちらの恐怖心を最大限に煽り、冷やりとさせ、緊迫させていて、この劇は見事だと感じた。
勿論、役者の素に見える程のさりげない演技も伴って、この劇が劇映画やドキュメンタリー以上に真実味を帯びていてすごかった。
教え子に何度か手を出しているような助教授大迫が女学生の林京子と奥さんと小さな子どもがいるのに関係を持ち、その教え子の女学生を殺したところから人生が狂い、平静を装いつつ、どんどん追い詰められ、最終的に一家心中というさらに悲劇的な結末となり、こうも人は転落するものなのかという絶望感、救いの一切ない終わり方に、重々しい余韻が残りました。
しかし、助教授の友人、助教授の務める大学の仲間、奥さんなどを巻き込み、助教授が殺人を犯したことから今までのような日常が送れなくなり、みんなそれぞれが少しずつ追い詰められていくさまが丁寧に描かれていて、何とも言えない複雑な気持ちになった。