熱海殺人事件 モンテカルロイリュージョン 公演情報 KURAGE PROJECT「熱海殺人事件 モンテカルロイリュージョン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/11/08 (金) 14:00

    つかさんの芝居は大昔の大昔、風間杜夫が主役の「熱海」を
    新宿紀伊國屋ホールで観たのが最初で、その時は何が何だか判らなかった。
    生れて初めてか2番目くらいに観た演劇だったし(歌舞伎教室を除いて)、
    「あたしを立てるのよ!」という絶叫しか覚えていない。
    その後2本くらい「熱海」を見たと思うが、本当の伝兵衛、アイ子の心情を
    感じて泣けたのは今回が初めてだった。
    訓練された怒涛の台詞に圧倒され続けた末に
    ラストあんなにしみじみ涙が出るとは思わなかった。

    ネタバレBOX

    木村伝兵衛と速水はともに棒高跳びのオリンピック選手、
    大山金太郎はその補欠で、
    山口アイ子は砲丸投げの選手だった。

    アイ子は長年のコーチを殺害し、
    金太郎はアイ子を殺害する。
    そして伝兵衛には速水殺しの疑いがかけられ、速水の弟が伝兵衛の下に赴任してくる。
    それぞれの事件の背景と本当の理由が、次第に明らかになる。

    彼らの苦悩と告白は、炎のような熱量を持って吐き出される。
    これまで過剰なまでのテンションで罵倒し合ったのは、
    この告白を引きずり出すためだったかと思う。
    MAXまで熱くなったところで一転、ラストはしみじみとその心情が哀しい。
    皆何と純粋な気持ちで生きているのだろう。
    伝兵衛の最期のしんとした心が痛いほど伝わって来て泣けてしまう。
    岡田竜二さんの、まばたきが極端に少ない視線の強さに惹きこまれる。

    彼らが皆、世間的に”下に見られる”立場の人間であったことが
    あの暗いエネルギー源となったような気がする。
    そこを出発点とする作者の視点の優しさが沁みてくる。

    時代が違うから差別的表現も多いが、それこそが当時の社会の匂いだ。
    あの強烈な屈辱と疲労感は、当時のことばの中でこそ生まれたものだったろう。
    出演者が皆素晴らしくて、次は違う作品でも観てみたいと思った。

    それにしても「熱海」、何とすごい脚本なのだろう。
    改めてつかこうへいさんに感謝して、これからも観ていきたい。

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    2024/11/09 02:02

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