実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/11/06 (水) 13:00
座席1階
放浪記で知られる林芙美子の物語。放浪記では貧乏を売り物にしている、戦時中は軍部の手先となって文章を書いて国民をあおった、とさまざまな批判を浴びている彼女の苦悩や、戦後に彼女が取った行動などをうまくまとめた音楽劇(ミュージカルの要素が強い)。とてもおもしろかった。
こまつ座では何回も上演しているというが自分は初めて。林芙美子役の大竹しのぶ、売れっ子だった芙美子に「流行歌の歌詞を書いて」と登場する加賀四郎を演じた土屋佑壱が特にすばらしかった。二人の歌唱には引き込まれた。
演出もテンポがよく、笑いを誘うシーン(と言うより演出)が随所にあって、まじめな栗山さんとは思えない(失礼)軽快さ。その演出に、6人の出演者が実によく応えていると思う。15分の休憩を挟んで3時間あるが、長さを感じさせない切れ味だった。
戦時中のメディアは特高警察の目も光っていて、結局国民を戦争に駆り立てる記事を書き続けた。それはきちんと罪を背負い、反省し、2度とそのようなことがないように肝に銘じなければならない。林芙美子が後段で見せた反骨は、自分たちにそれを示している。