熱海殺人事件 モンテカルロイリュージョン 公演情報 KURAGE PROJECT「熱海殺人事件 モンテカルロイリュージョン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    演劇を観て久しぶりに熱いものが込み上げてきた。今年観てきた つか作品ではピカ一。脚本や演出の力は言うまでもないが、演技が凄い!物語の底流にある優しさ切なさなどが、役者の体を通して滲みだし 熱き思いが迸る。熱演という言葉は、この公演(演技)のためにあるようだ。

    「熱海殺人事件 モンテカルロイリュージョン」は、たぶん未見だと思う。説明にある「二つの事件が交錯しながら進展していく」は、早い段階で事情が明らかになるが、そこに隠された心情が切ない。オリンピック選手として 陽で輝く者と陰で泣く者、そして1人の人間としての生き様を切々と描く。少しネタバレするが 主宰 月海舞由さんは、刑事 水野朋子と被害者 山口アイ子、その2人の女性の愛を重ね というか対比する。一方は情を貫き、他方は裏切られるという違った結末を叙情豊かに演じる。終演後、口々に泣けた との感想が…観応え十分。ぜひ劇場で。
    (上演時間2時間 休憩なし) 11.8追記

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央に木村伝兵衛部長刑事の机、下手にホワイトボードと丸椅子だけ。部長刑事の机に黒電話、シャツが置かれている。勿論、大きな机は権威の象徴。冒頭、木村伝兵衛は上半身裸。その筋肉質が、オリンピック選手であったことを思わせる。

    物語は、棒高跳び の記録を塗り替えた元オリンピック日本代表選手で、現 東京警視庁・木村伝兵衛部長刑事(岡田竜二サン)が、熱海で殺された砲丸投げ選手・山口アイ子の事件の容疑者、大山金太郎(なかやんサン)と再会する。大山もかつては、同じ棒高跳び日本代表の補欠選手であった。同じようにオリンピックでメダルを目指した選手へ敬意を払うような事件へ。
    一方、山形県警から転任してきた速水健作刑事(関口アナンサン)の兄も棒高跳びの元オリンピック選手だったが、モンテカルロで自動車事故を起こし亡くなった。その時に同乗していたのが、木村部長刑事だったと。その事故死を疑う速水刑事は…。そして木村を愛するが、受け入れてもらえない病身の婦人警官 水野朋子(月海舞由サン)。そして謎の男(辛嶋慶サン)。
    主な登場人物は4人、それぞれの心情吐露といった見せ場を設け、同時に他者との関わりを表す敬愛や思惑等といった感情を落とし込むことで より人間性を浮き彫りにする。

    二つの事件を交錯させ、 謎解きとオリンピックという栄光の影に隠れた、エリート選手と補欠選手との絶望と苦悩が明らかになっていく。同じ選手とは言え、補欠の男性選手はゴミ、女性選手はコケと陰口を叩かれ、待遇面で〈差別〉されていた。練習に青春期の貴重な時間を費やし、報われないことも多い。それでも愛する人を信じて…。部長刑事の同性愛という設定にも性の<差別>または<偏見>を訴える。
    愛欲と名誉さらには金銭といった欲望の渦に身を投じた悲しいまでの結末、しかし純粋に直向きに生きた、を描いた人間ドラマ。
    苛めや差別またパワハラ・セクハラ等、コンプライアンスが厳しく言われる現代、だからこそ、描かれたような時代があって 今があることを知る。古き良き時代ではなく、悪しき慣例・慣行を描くことも、当時(時代)を反映した演劇の面白さだろう。まさに演劇は時代の鏡なのだ。

    物語の中に突然 音楽<歌>やダンスシーンを挿入し 観客の関心を惹きつけておく。歌(オペラ風)は、グイグイと引き込み面白可笑しく聴せる。勿論 戯曲の<力>もあろうが、役者の激情が 迸ったような迫力がそうさせる。照明は単色を瞬間的に点滅させるだけだが効果があり巧い。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/11/06 17:08

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