忘却曲線 公演情報 青☆組「忘却曲線」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    全ての人に捧げる子守唄
    物語は抒情詩的な描写で表現されていたが、家族の心理状態をキャストらが吐くセリフとそれらを結ぶ情景で絶妙に舞台を作り上げていた。導入音楽も素敵だった。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    作家で詩人のパパは交通事故で粉々になって死んでしまう。心底、夫を愛していた歌手のママは夫の「日記を書きなさい」との提言を実行していた。ママにとって日記は過去の悲しい出来事を忘れさせてくれるものだった。そして子ども達にも「日記を書きなさい。できるだけ丁寧に・・。」と口癖のように教えるのだった。

    子どもたちはママの言葉通り、毎日、日記を紡ぐ。それらはいつしか習慣になっていったが、7年後の夏に今度はママが夫を追うように失踪してしまう。

    残された子供達はママとの過去を忘れられず、ママと過ごした家からも離れることが出来ずに、悲しみと切なさと思い焦がれる望郷の上に人生を歩んでいた。

    その後の4人の兄弟は必ずしも幸せそうではない。こういった物語の紡ぎ方が小夏の独特のセンスでもある。生きてる人達の多くが不幸せと幸せを絶妙なバランスで交互に綱渡りをしているようなものだと思う。誰でも生きてる人は、みなそこにある死に向かっているのだから、怖がらずに生きてる間は生きてるあいだを自分らしく楽しく過ごせばいい、とも思う。

    ここで登場するママは娼婦のようなメイクで4人の母でありながら生身の女を印象付ける。このことから失踪した後の女としてのママの生き様をも想像できてしまう。そのママも彼女らの故郷へ帰ってきたようだったが、小さな猫をかばって交通事故に撒き込まれ夫と同じように粉々になって死んでしまう。

    夏の思い出、それは潮風と共に突然やってきて、彼らの記憶を鮮明にさせるだけさせて、また突風のごとく走り去ってしまうのであった。

    愛する人の死。それは二度と逢えなくてもそれで終わるわけではない。4人の子供のママ。世間と言うものは錯覚しがちだけれど、親になったとたん聖人に変身する訳じゃない。その人の性格というものはさして変わらない。個性だからだ。ママは女としての自分を捨てきれなかっただけだ。

    私達はこれからも、そう変わらない人生を生きていくだろう。しかし未来は私達を見捨てない。


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    2010/09/09 12:44

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