Sea on a Spoon 公演情報 こゆび侍「Sea on a Spoon」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    芯までくっきりと描かれる
    これまでの「こゆび侍」ワールドがさらに洗練された印象を持ちました。

    一番芯になる部分がくっきりと浮かび上がり、研がれた切っ先としてやってきました。

    ネタバレBOX

    原発をめぐる物語なのですが、
    核開発にかかわるイデオロギーの匂いを
    ほとんど感じさせないほどに、
    個々の人間から抽出されるものに洗練がありました。

    ある種の悲劇的な構造をもっていて
    個々のキャラクターに怠慢がない。
    シチュエーションの中で
    それぞれが自らに課せられたものにたいして、
    焦点がしっかりと絞られて
    とても真摯なのです。

    ただ漫然と人物が描かれていたら
    とても薄っぺらいアンチ原発のドラマになっていたかもしれません。
    でも、作り手には、不要な葉っぱをそぎ落とし
    幹や枝を浮かび上がらせ
    物語のシチュエーションをくっきりと描き上げ、
    そこに果実のようにキャラクターを実らせるだけの
    手腕があって・・・。

    物語のボディに当たる部分の観る側の視点を
    町役場の一室のみに固定して
    一本道ではないプロットを
    秀逸に編み上げて
    プロローグとエピローグで挟み込んで
    一気に見せ切る力に瞠目。

    役者たちも、
    キャラクターにいたずらにデフォルメを加えることなく、
    丁寧にその場の個々を、
    くっきりと演じ上げていきます。

    音と照明が鳥肌が立つほどにしなやかで
    がっつりとした切れとボリューム感で
    舞台を支えていく。

    結果、原発の存在感が借景となって、
    人間それぞれのコアにあるものが、
    くっきりと浮かび上がってくるのです。

    これまでのこゆび侍の作品には
    終盤に内心のカオスが
    そのまま観る側を押し切ってしまうような部分がありましたが、
    今回は、そこに人間が無意識に持つ
    意識の底にある、真摯やずるさ、「業」のようなものまでも
    くっきりと浮かび上がってきて・・・。

    その向こう側にある作り手の
    冷徹で秀逸な眼力を感じてぞくっとなる。

    正直なところ、作品としてのパワーは、
    抽出された様々な想いをそのまま集約して観客に押し込んだ
    従前の作品の方が強いように感じました。
    でも、今回の作品が残していく感覚には
    そこからもう一歩踏み込んだような
    独特のテイストがあって・・・。
    作り手は醸しだしたものを溢れさせるにとどまらず
    そこから、もう一段純化させるような、
    更なる手練を身につけたように思う・・。

    今回の作品の秀逸に、
    べたな言い方をすれば
    腕を上げた作り手や演じ手たちの
    さらなる可能性の広がりを感じたことでした。


    ☆☆★★◎△







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    2010/09/06 06:40

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