実演鑑賞
満足度★★★★
凄い空間に立ち会える喜び。最高級の役者陣が圧倒的な世界を体感させる場。ここに今居れることの幸運を噛み締める観客達。
古い日本家屋の居間。家の無職の兄(谷仲恵輔氏)は座布団を叩き付けると横に転がって昼寝。妹である中村栄美子さんが起こして追い払う。今日は入り婿に入った旦那(浜谷康幸氏)の家族会議。旦那の呼び集めた親族達が続々とやって来る。三十年振りに顔を合わせる兄弟達。勝手口の軒下の庇に頭をぶつけて流血している今井勝法氏がまず登場。派遣で食いつなぐ労務者だ。集められた疑心暗鬼の面々がこの場の真意を無言で探り合う。
今井勝法氏(この人は演出の寺十吾氏の分身なんだと思う)と谷仲恵輔氏の対決はもう『サンダ対ガイラ』。完全にイカれたキチガイの取っ組み合いが延々と続く。この二人さえ見られればあとの話はどうだってよくなる程の破壊力。これぞ『ジョーカー』日本版に相応しい、無用のプライドだけを持て余した“無敵の人”。この二人をメインにスピン・オフを作るべきだ。はっきり言って作家の訴えたい事なんてみんな霧散、この「モンスター・ヴァース」に取って食われた。
是非観に行って頂きたい。