渡り鳥の信号待ち 公演情報 世田谷シルク「渡り鳥の信号待ち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    表地に縫いつける創意の豊かさ
    一つずつのシーンが、豊かな寓意に満ちていて・・・。
    しかも、表現が鮮やかで、
    目を奪われ、惹きつけられて
    流れずに積もっていく。

    終盤に、描かれたものたちの
    内にあるものに気がついたとき
    それまでの作品のイメージがドミノように返り、
    重ねられたものに
    透明感をもった生々しさが訪れて・・・。

    作り手の創意に圧倒されました。

    ネタバレBOX

    開演を導く、
    小粋にアレンジされた
    スタンダードナンバーに気分がほぐされ
    リラックス。

    初日ということもあってか
    冒頭はほんの少しだけ混濁していました。
    でも、すぐに世田谷シルク本来の
    豊かなテンションと寓意を織り込んだシーンが連なって・・・。

    ボサノバにのせて歩いていく動作が
    まるで、食前酒のように観る側の心を開いてくれる。
    宮沢賢治の世界がそこはかとなく薫って、
    やがて、列車に乗るころには
    ひとつずつのシーンに自然に取り込まれていきます。

    そのつながりは、「銀河鉄道の夜」に支えられているのですが
    一方でその中に織り込まれたものたちの姿は
    なかなか浮かんでこない。
    でも言葉やしぐさ、背景のメッセージ。
    映像やダンスがそのまま流れてしまうのではなく
    印象を含めて「そのまま置いといて・・・」と
    観る側に居場所を生み出す力を持っていて。

    気がつけば、
    表現されたままに
    場ごとのいくつものキャラクターやアイテム達に
    目を凝らしている・・・。
    それぞれのシーンの作りこみが
    観る側をしっかりと舞台につないでいてくれる。

    そして、私的には、
    二つの指輪から見える宇宙として刻まれた
    DNAに気がついたとき・・・、
    トリガーが引かれて
    まるでドミノ倒しのように
    様々な寓意がその衣を脱ぎ捨て
    見事にリアリティを持って一気に広がりました。

    個々の寓意が表すものが鮮やかに浮かび
    「「そのまま置いておいた」ものに
    見事に血が通う・・・。

    男女の営み、生命の誕生・・・。
    出会って結ばれる細胞や
    結ばれないものたちの感覚・・・。

    男性の私であっても
    男性の感覚に下世話さはなく
    体感することのない
    女性が持つ肉体の周期のロジックが
    しなやかに浮かび上がる。

    そこには、立体感を持って広がる
    体と命と想いの俯瞰図があるのです。

    停車していても
    走り出しても
    急こう配に差し掛かっても
    加速減速を繰り返しても
    物語の綴り方や役者たちの演技が
    「銀河鉄道」という表の生地から
    寓意をほつれさせないから
    観る側が裏地を眺めることができた時
    そこには命が繋がれていくメカニズムのコラージュが
    下世話に汚れることなく
    崩れることなく、
    しかも質感をしっかりと守って
    広がっていく。

    ダンスや演技のクオリティにも支えられて
    透明感を失わなず、
    ウィットを湛えて、どこか冷徹でシニカルで、
    そして女性としての感覚に満たされた
    作り手の描く世界にそのまま取り込まれる。

    正直に言って、
    終演に至っても
    作品に織り込まれたすべての寓意が、
    私にその姿を晒していたわけではないと思います。
    きっと味わいきれていない部分もあったはず。
    さらには、男性ではわかりえない感覚も
    あるのかもしれないと思う。

    でも、すべてはわからなくても
    男女が出会う感覚はそこにあり、
    卵巣や精嚢までも含む物理的な肉体から、
    女性の周期や男性の感覚、
    そして男女の営みや、
    出会えなかったものたちの想い・・・。
    さらにはそれらを統括する宇宙のメカニズムが
    幾重にも醸し出す色というか質感に圧倒され
    息を呑む。

    指輪に加えて、牛乳や林檎、鍾乳洞や湖・・・。
    鳥たち、鍾乳洞、時間、二人の社員旅行とその妹・・・。
    列車がのぼる急勾配、減速・加速・・・。研究隊サークル。
    それらに込められた創意は圧巻で、
    しかも、それらを「銀河鉄道の夜」にのせて
    流し込んでいく見せ方に心奪われて・・・。

    さらに進化していく余地もある作品なのかもしれません。

    でも、少なくとも私には、
    この作品を味わうことができたことが
    とても満ちたものに思えたことでした。

    帰り道、開演時のナンバーが
    ふっと耳に蘇る・・・。

    fly me to the moon,and let me play among the star・・・♪

    歌詞を口ずさんで、
    戯曲に埋められた、
    作り手の真摯な遊び心に思い当たって。

    もう一度、この作品が内包するものの
    味わいの深さと豊かさに
    満たされたことでした

    ☆☆☆★★◎◎●●

    2

    2010/09/04 09:29

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  • あ・・・、ありがとうございます。

    この作品については、身体表現的な要素が多いので、
    そこで好き嫌いは分かれるかもしれないのですが・・・。

    ただ、初演はサンモールスタジオで
    もっと広さがあればと痛切におもったので
    今回、十分に舞台の広さがあるであろうトラムでこの作品をみることができるのは
    とても楽しみです。

    私もたくさんの期待を持って
    劇場にお伺いしようと思っています。

    2011/12/29 11:37

    りいちろさんが2010年のベスト10に入れていたのでシアタートラムでの公演のチケット買いました。りいちろさんとアキラさんの書き込みは勉強になります。

    2011/12/28 08:55

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