ゆうせいむしむし 公演情報 劇団芝居屋かいとうらんま「ゆうせいむしむし」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

     板状、基本的には素舞台。滑車付きの障子数枚を場面、場面で移動。衝立、間仕切り、袖、或いは裏に書かれた文字、写真を用いて必要に応じたインフォメーション掲示板として用いる。この辺りの演出はグー。然し脚本は劇作家の勉強不足が出てしまった。演技は悪くない。

    ネタバレBOX

     基本的に内容は敗戦後のどさくさから東京タワーが建設された(1958)頃迄。場面によって主人公らの従軍時代が回想シーンとして描かれる。面白いのが、今作で奇妙な仕事をやる登場人物2人の仕事に纏わる最初のシーンで彼らの仕事が新聞広告に載り、その内容が障子裏に書かれた文字として表現されている点だ。曰く‟命販賣致し〼“。売るは旧字でますは〼で示されているのが実に良い。 
    自分が勉強不足と指摘したのは、戦中、戦後の描写が余りに表層的と見えたからだ。オープニング早々の模様は障子に張られた写真を移動させつつ見せる内容で所謂『玉音放送』の一端も流されるが敗戦直後の都市部の飢えは極めて深刻で餓死者も多く出た。戦中の方が未だマシなくらいであった。その訳は、戦中は曲がりなりにも配給制度が機能していたせいで極めて粗末とはいえ一般庶民も糊口を凌ぐことができたからであるが、敗戦後はこれも崩れ、敗戦で価値の殆ど無くなった日本通過はハイパーインフレを起した為、生き残る為に人々の多くは家宝を農家に売り食物を得るというようなことがザラであり、庶民は生き残る為に何でもやった。敗戦後長い間、ラジオ・TVドラマの台詞にも「叩けば埃の出る体」という台詞が頻出していた。こんな状況の中で多くはヤクザが仕切る闇市が隆盛をきたし、利権を争う争闘も多発した。因みに特攻帰りの青年らが新興勢力としてこれらのシノギを巡りヤクザともことを構えた。背景には軍が特攻の恐怖を紛らわせる為にシャブを用いていた点も見逃せない。特攻生き残りの若者が抱えていた憤懣やるかたない心情の苛烈と体験して来た亡き戦友たちへの複雑な念、生き残っちまった自らを制御仕切れない「祖国の様変わり」に対する劣情と悔しさの爆発を想像してみて欲しい。
     余談ではあるがシャブは敗戦後も合法的に薬局で売られていた。薬品名をヒロポンという。敗戦後も長くこのようにシャブが合法化されていた理由は、国策としてシャブが用いられていたことが中毒者を産み簡単に禁止できなかった、という理由以外には考えられまい? こういった状況をそれとなく挟んで事態の深刻さをもっと皆に分かるようにすべきだったと考える。

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    2024/10/06 16:26

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