セチュアンの善人 公演情報 劇団俳優座「セチュアンの善人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ブレヒトの代表作の一つ。長年持ちレパとしていた演劇アンサンブルの最終公演(鑑賞会公演)を観たいと申し入れていたのが上演中止となり、泣く泣く断念したのが10年近く前。そんな事を思い出したが、漸く上演が観られた。
    俳優座劇場のステージが近く見える。小劇場の範疇。のっけから所狭しと走り回るワン役による所か。こんな元気の良い逸材が俳優座に居たのか・・?と驚いたら、桐朋の学生だった。学生演劇はさほど見ていないが、以前桐朋学生の発表公演を観た時の印象は、出来上がった感にまで持って行けるポテンシャル。即ち若さ、による柔軟さ。適役を与えられれば無敵状態。
    本舞台では降板と再配役が相次いだ模様だが、結果的に大きな役に起用された桐朋学生の存在感と劇団とのマッチングは頗る良かった。
    ブレヒトらしい皮肉の効いた寓話(教育劇を思い出させる)を心行くまで堪能。三人の神様の登場や心優しい売春婦(善人)のシェン・テと効率を重んじる冷徹なその従兄弟シュイ・タの謎が寓話性を高めて美味しい。
    根底には資本主義社会の構造(人間の行動原理を含めた)を物語を使っておちょくり暴露する視点があるが、「恋愛」をまな板に載せているのが興味深い。

    ネタバレBOX

    現代を反映した台詞を書き加えていて、そこは気が利いていたが、結語に「効率なんてくそくらえ」の台詞を据えていたのが私としては勿体なかった(敵を「効率」の語で括ってしまうのは繊細さに欠きはしないしないか。家事だって効率を求めて主婦は賢く立ち働いている。これを糞食らえとは思わない。では何が我々の敵なのか・・考察を要する。台詞一つはとても重要だ。)。
    そして最終シーン。暗転の後に中央の円形にてんこ盛りになった俳優らの塊が現われ、「2000年後」の字幕が点灯する。これが分からない。
    後の解説によれば、文明の象徴である「ビル群」との事だが、ビルには見えず、本編では既に現代が混入している所、「2000年後」だと西暦4000年代か?と訝り、造形の意味も分からないので些か混乱を来す。試行錯誤の結果だったろうが、ここも少々もったいなかった。

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    2024/09/27 12:39

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