実演鑑賞
満足度★★★★
面白い。
隠微・淫靡な雰囲気の中で紡いだ愛欲劇。豪華な邸宅、その外見の瀟洒さとは打って変わって、住む人の爛れた関係、抑えられない欲望が どす黒く渦巻く。登場人物は6人、そこに親密ならぬ歪で<濃蜜>な関係を作り 人間の欲望を浮き彫りにしていく。
時代は 明治から大正への過渡期、日清・日露戦争を背景とし、卑しい職業(石炭掘りは軽蔑の対象)と言われていた炭鉱で成り上がった男の家の話。劇団東京座が「時代の様相」と「家」を独自の観点で描いたオリジナル作品・第三弾。物語は、彼が年若い妾を後妻として迎えようとするが、彼の息子たちが夫々の思いを抱くことで、人間模様が大きく動き出す。この公演の見どころは、俳優陣が夫々の性格や立場をしっかり表し、抒情的な台詞を交え濃密な会話を紡いでいくところ。女優陣の和装とその所作が美しく、男優陣(洋装)の動・静ある激情に想いが滲む。
前作「人形の家」も豪華な作り込みであったが、本作も<九州の平民から石炭で成り上がった実業家>ということで、その豪邸が舞台となっている。名は伊藤正久、実はこの人物のモデルと思われる人(伊藤伝右衛門)の豪邸を見学したことがある。そして物語とは違うが、この人物の後妻も或る事件を…。自分の中ではフィクションとノンフィクションが入り交じり、興味深く観た。
池袋演劇祭参加作品。
(上演時間1時間15分)