『ミネムラさん』 公演情報 劇壇ガルバ「『ミネムラさん』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    3人の劇作家の物語を1人の演出家(西本由香)がまとめ、<ミネムラさん>という1人の女性を紡ぐ。当日パンフ(記載順)によれば、3人の作品は「フメイの家」(作・細川洋平)、「世界一周サークル・ゲーム」(作・笠木泉)、「ねむい」(作・山崎元晴)で、時間軸を10年間隔か もしくは交錯させるという技巧的な構成だ。この公演自体が実験的なもので、その面白さは観客の感性に委ねられている。

    作者が違うから劇風も異なるはずだが、そこは上手く調整し統一感は保たれている。と言ってもオムニバスのような紡ぎ方で、時間軸を違えることによって違和感を抱かせない。1人の女性の多面性、それを自らの状況・環境の変化で観せる と同時に、他の者(第三者)の目を通して描き出す。その人間観察を少しコミカルに表現し、内省とか客観的という難い面を和らげている。

    少しネタバレするが、舞台美術が秀逸だ。有効ボードを上手く使い<家屋>もしくは<家庭>といった居場所を現す。そのボードには木目があり温もりを感じさせる。勿論 場面に応じた音響・音楽は、不穏や優しさを表現するといった効果的な役割を果たす。全体的に不思議・空想的な感覚の話だが、なぜか観入ってしまう魅力がある。
    (上演時間1時間50分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    有効ボードを可動できるよう 幾つかに切り分けており、そのパーツの組み合わせの違い 変化によって、色々な情景・状況を作り出す。先にも記したが木目がきれい、しかも自分の席からは<龍の頭>のようにも見えた。後ろは暗幕で囲っており、パーツの組み合わせによって窓を作り、照明を当てると不思議な世界が…。それと幾つかの箱馬が置かれている。

    物語は、警察に探し物(者)の捜索を依頼し、家の中を動き回る警察官と浮浪者?探しているのは手紙なのか、その差出人本人なのか といったチグハグな会話から始まる。受取人ヤマザキは差出人の名前を思い出せない。「ミ、ミネ・・」と記憶がボケるようで、早くも不条理の様相が見える。場転換しミネムラさんの家。ここにヤスコという女性を住まわせ、彼女が就職できるまで面倒を見ている。ここにはミネムラさんという”普通”の女性が描かれている。尤も”普通”とは を追求しだすと難しい。更に場転換し、結婚し赤ん坊もいるミネムラさん。年の離れた夫の連れ子だ。実は妹が同居しており、精神を病んでいるような。しかし 本当に病んでいるのは 妹なのかミネムラさんなのか、混乱・錯乱そして狂気な世界。

    ミネムラさん(心)の旅は、現実なのか空想の中か、その混沌とした不思議世界が公演の魅力。この人は こういう人と特定/断定出来ない。その人には色々な面があり、その多面性によって捉えどころ(人物像)が違う。勿論 他者(相手)との付き合い方や深度によって印象は異なる。もっと言えば自分が知らない自分(第四の窓)的な感じも受ける。

    一般的なストレートプレイ公演とは趣が異なり、場面の繋がりが唐突というか歪に感じられるが、そもそも3人の作家の作品を1つにして描いている。その発想にどれだけ順応できるか、見巧者向けとは言わないが 手強い公演ではある。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2024/09/19 17:50

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大