三人吉三廓初買 公演情報 木ノ下歌舞伎「三人吉三廓初買」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/09/15 (日) 13:00

    座席1階

    歌舞伎の現代劇化に取り組む木ノ下歌舞伎の長編代表作。20分の休憩2回を挟んで5時間を優に超える超大作だが、東京芸術劇場・プレイハウスの大きさに余裕のあるシートも役立ち、疲れることなく舞台に没頭できる。何よりも、歌舞伎を身近なものにという台本、演出、舞台美術に共感し、好感を覚える。歌舞伎の演目がベースであるものの、躍動的、そして人情味あふれる現代劇として十分に堪能した。

    初演から10年、今作も新たな修正、演出を盛り込んだという。おそらく、開演前の立て看板「TOKYO」もその一つだろう(終演時にはこれが白紙に。未来の東京へ続くという意味だと受け取った)。三人吉三廓初買が演じられたのは明治維新直前の幕末だが、当時の江戸が現代都市・東京と地続きの場所、そして当時の人たちが今につながる舞台上にいるという作家の意図を強く感じる。この点は、物語とは全く関係のないシーンがあちこちに息抜きのように挿入されていたり、現代東京の若者文化の象徴が盛り込まれているところからも推察できる。
    当時は男女の双子が不浄の子とされるなど、確かに、ジェンダー平等が叫ばれる今とは感覚が全く違う。推察だが、庶民の思いを描いている歌舞伎が、特に近年の時代の流れで「不適切なもの」として否定され、演じられなくなるのではないかということを強く拒んでいる。だからこそ、東京と江戸がわずか百数十年の距離しかなく、ジェンダー的に問題があっても、避けられない運命を背負わされた者たちが今も昔もどう生きていくのかを、東京の香りをにじませながら客席に提示したのだと思う。
    登場人物が和服なのに靴だったり、それどころか洋服を着ていたり。岡っ引きが今の警察官の姿だったり。でも、全然違和感を感じないところがすごい。ただ、せりふは歌舞伎に忠実であるようだ。
    ラストシーン、花魁の一重が果てる場面では客席のあちこちで感涙を絞った。ああ、すごいな、この舞台は、と感じ入る瞬間だ。木ノ下歌舞伎初出演の役者も多いが、スタンディングオベーションを見れば、きっちりと仕事をこなしきっていたのがよく分かる。

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    2024/09/15 20:23

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