実演鑑賞
満足度★★★★
本作どこかで観たと思っていたのは思い違いか(戯曲を前半だけ読んだ、等あり得る)、、あるいは毎回驚かされるハツビロコウ流アレンジによるものかも・・。
どちらにしても細部(特に後半)は記憶になかった。
以前「触れた」時の人物イメージとはまるで異なる人物が登場し、書かれて百年を経た戯曲の上演とは思えない現代性と、物語構築の精妙さがやはり印象に残る。
二日後に落ち着いて当日パンフを眺め、主宰の弁を見ると、ヘッダの戯曲をある軸を通すべく松本氏が「書いた」と書いてある。毎回気になっていた優れたテキレジだが、今回はより大胆に書き直したという事か。
特殊な人物としてのヘッダではなく、ごく普通の女性としてヘッダを捉え直した、との弁であるが、近代の憂鬱を捉えたイプセンの洞察による人物造形は、当時は(周囲の反応等で)センセーショナルに演出するに値しても、現代的視点で捉えれば「普通にいる」のかも。もっともヘッダに象徴された人間の「善悪の彼岸」を求める性質は、今も大きなテーマであり続け、収縮に向かう日本の思想状況では強力なアンチに。(三島由紀夫の価値はこうして時代に逆照射される。。)
変わる事なく息詰まる緊迫劇を作るハツビロコウである。
今回は原作を読みたくなった。
2024/09/15 08:26
「原作を読みたくなった」何よりも嬉しいお言葉です。
イプセンの物語自体は140年後の今も変わらずに面白いのですが、
おっしゃる通り、観客側が感じる「普通」と「普通じゃないこと」は当時とはかなり変わっています。
劇中で起こるいくつかの「事件」(ヘッダ・ガブラーは特に事件が多いように思います)が140年前はどれほどセンセーショナルに受け取られたのか、それを現代ではどう表現すれば同等の印象を与えられるのか。
今回はその点に注目して創作をしました。
いつも丁寧に書いていただきありがとうございます。大変参考になります。