世界 、 公演情報 演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)「世界 、」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/09/02 (月) 13:30

    宗教によって人心掌握・コントロールしようとする政治、
    その世界観が、劇場に入った途端、舞台上に広がっていた。
    絡め取るような手を伸ばすような、守ってくれるような首を絞めるような
    規則正しく複雑に編まれた赤いロープのセットが素晴らしい。

    ネタバレBOX

    開演前から、呪文のような、教科書をとつとつと読むような子供の声がする。
    無垢な子供が意味も解らないまま読んでいる感じから、宗教教育の不気味さが漂う。

    第四次世界大戦から千年後の世界である。
    今生きている者で、太陽を見た者はひとりもいないという、雲に覆われた世界。
    そこでは、光る鉱石が労働の対価であり、生活の灯りであり、動植物の成長に
    欠くことのできない存在となっている。
    人々は鉱石を大切に使い、貧しいながら神に祈りをささげて生きている。
    この貴重な鉱石がマシリテン財団の所有地でのみ採掘される為、
    国は財団から鉱石を買い取り、国民に配給している。
    必然的に財団はうるおい、法律の改正など国政に口を出すようになる。

    貧しい暮らしの中で神を信じ、厳しい戒律を守っている底辺の人々の中にも
    国王が戒律を破っているという噂や、神の存在に疑問を呈する発言が出て来る。
    王宮で働く下男二人が、神は存在するのかしないのかという議論を戦わせるところ、
    家族のために財団から選ばれて”与える側”に入ることになった娘の葛藤、
    国王と財団の法律改正を巡る駆け引きなど、緊張の高まる場面が素晴らしい。

    全編に渡って台詞に緊張感があり、そこに時折差込まれるユーモアが抜けを作る感じ。
    お人よし過ぎる下男の役回りや、彼の父親の飄々とした振舞いなど
    計算され尽くした笑いに観ている側も救われる気がした。

    ついに太陽が顔を出し光の鉱石が不要になって、世界に明るい未来が兆す。
    ここで財団の使者たちに天罰が下って欲しいと思ったのは、私の性格の悪さか。

    SFとはいえ今地球上で起こっていることと何ら変わらない営み、人の心、欲や弱さ。
    人間くさく「神はいない」と言い切って酒を飲む国王のキャラが実に魅力的。
    劇場の階段を使った高低差のある空間を存分に使い、唯一無二の世界を創り上げた。

    今から千年後、そこにはどんな世界が存在するのか想像もつかない。
    でもきっと、今と大して変わらないちょっと情けない人間たちがいるような気がする。









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