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満足度の平均 4.2
1-4件 / 4件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/09/02 (月) 13:30

    宗教によって人心掌握・コントロールしようとする政治、
    その世界観が、劇場に入った途端、舞台上に広がっていた。
    絡め取るような手を伸ばすような、守ってくれるような首を絞めるような
    規則正しく複雑に編まれた赤いロープのセットが素晴らしい。

    ネタバレBOX

    開演前から、呪文のような、教科書をとつとつと読むような子供の声がする。
    無垢な子供が意味も解らないまま読んでいる感じから、宗教教育の不気味さが漂う。

    第四次世界大戦から千年後の世界である。
    今生きている者で、太陽を見た者はひとりもいないという、雲に覆われた世界。
    そこでは、光る鉱石が労働の対価であり、生活の灯りであり、動植物の成長に
    欠くことのできない存在となっている。
    人々は鉱石を大切に使い、貧しいながら神に祈りをささげて生きている。
    この貴重な鉱石がマシリテン財団の所有地でのみ採掘される為、
    国は財団から鉱石を買い取り、国民に配給している。
    必然的に財団はうるおい、法律の改正など国政に口を出すようになる。

    貧しい暮らしの中で神を信じ、厳しい戒律を守っている底辺の人々の中にも
    国王が戒律を破っているという噂や、神の存在に疑問を呈する発言が出て来る。
    王宮で働く下男二人が、神は存在するのかしないのかという議論を戦わせるところ、
    家族のために財団から選ばれて”与える側”に入ることになった娘の葛藤、
    国王と財団の法律改正を巡る駆け引きなど、緊張の高まる場面が素晴らしい。

    全編に渡って台詞に緊張感があり、そこに時折差込まれるユーモアが抜けを作る感じ。
    お人よし過ぎる下男の役回りや、彼の父親の飄々とした振舞いなど
    計算され尽くした笑いに観ている側も救われる気がした。

    ついに太陽が顔を出し光の鉱石が不要になって、世界に明るい未来が兆す。
    ここで財団の使者たちに天罰が下って欲しいと思ったのは、私の性格の悪さか。

    SFとはいえ今地球上で起こっていることと何ら変わらない営み、人の心、欲や弱さ。
    人間くさく「神はいない」と言い切って酒を飲む国王のキャラが実に魅力的。
    劇場の階段を使った高低差のある空間を存分に使い、唯一無二の世界を創り上げた。

    今から千年後、そこにはどんな世界が存在するのか想像もつかない。
    でもきっと、今と大して変わらないちょっと情けない人間たちがいるような気がする。









  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    舞台美術が印象的。座れるようにもなっている。ストーリーは宗教絡みでシリアスではあるがどこかカラッとしていた印象。しかしいろんな問題が提起されている。あの劇場の階段まで使う演出も興味深い。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    お初の劇団さん
    楽しかったです!

    ネタバレBOX

    下手側に印象的な赤いロープのオブジェクト。
    登場人物たちが首につけるロープと合わせて、制約、拘束、呪縛といった言葉が連想がされる。
    少年の声での音読が、不気味で良い味を出していた。

    わがままをいうと、実はこいつらが悪者でした、的な展開として少し弱い気がする。もう少し展開に裏切りがあってほしかった。あと父の苦悩をもっと見たかった。
    あと、一神教にあまり馴染みがない日本だとあまり問題ないのかもですが、宗教や神を客体化して扱うのは結構センシティブな気がします。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    現代社会の暗部を抉り出した観応えあるSF作品。第四次世界大戦以降、厚い雲に覆われ太陽が見えなくなった世界。そんな環境下においても 人間社会の不平等や不寛容は存在する。いや不自由で生活苦だからこそ、その意識は剝き出しになる。そんな人間(個人)と社会(政治)の不都合(暗部)が鮮明に浮かび上がる秀作。
    因みに、厚い雲に覆われ太陽が見えなくなった原因は、原爆等 人間に制御不能な新兵器の影響を想像してしまう。

    表層的には、骨太で重厚な雰囲気を漂わせているが、随所に笑いの場面を鏤めるなど飽きさせない工夫をしている。舞台美術・技術が見事で、その妖幻といった雰囲気が物語を支えているといっても過言ではないだろう。勿論 内田健介さん、松本紀保さんを始めとした役者陣の演技力は確かで、圧倒的な熱量で物語へ惹き込んでいく。週末、台風の中 出張がなければ もう一度観たかった。
    (上演時間2時間 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、気鋭のロープアーティスト・緊縛師である、一(はじめ)鬼のこ氏による赤い縄を天井まで張り巡らせた蜘蛛の巣 状のオブジェ、その中心部に光る球体。そして収納型の箱馬がいくつか置かれている。全員この赤い縄を(スカーフのように)首に締めており、いろいろな(例えば自縄自縛といった)意味を持たせているようだ。

    当日パンフに梗概が記されているが、それによると1000年前に第四次世界大戦が勃発し、厚い雲に覆われた国(王制)が舞台。お金以上に光の鉱石が重宝されており、その光石はマリシテン財団が所有する土地でしか採掘されない。国が財団から光を買い取り、国民に配給している。光は暮らしや動植物の成長に不可欠なもの。月に一度、社会的地位や職種、労働の量によって光の分配が決まる、というもの。

    規則・規制の順守、その秩序が守られなければ国は崩壊する。その理屈はもっとものようだが、そのルールは誰がどのような手続で決めるのか。王制といっても 光石がなければ暮らしは成り立たず、実質的な生殺与奪権は財団が握っている。財団の思惑は国をも動かす。翻って、企業献金を始め 色々な資金集めに汲々としている政治(家)、利権に群がる富裕層もいれば、生活苦に喘ぐ貧民層もいる。政治はどこを向き、進もうとしているのか。一方、人の心情を覗いてみれば、嘘偽り、甘言を弄し惑わす。そして嫉妬や羨望が渦巻く深淵が透けて見えてくる。

    神の存在を信じるか否か。同じ王宮で働く下男のキーチ・カワウチ(内田健介サン)とエタ(奥田務サン)による存在・非存在の議論は、悪魔の照明 を思わせる緊張と迫力ある場面。神の存在を信じるエタ曰く、1000年もの間 戦争はなく平和に暮らしてきた。それは神の御加護だと。平和であれば多少の生活苦など…その次元の異なる屁理屈が怖い。法の制定と施行を順次行なう国(王)の施策と早急に制定・実施を迫る財団の思惑。そこに絡む風評やデマを厳しく取り締まり、財団への批判をかわす。インターネットの普及によって情報の真偽を確かめる術が難しくなった状況に重なるようだ。そしてコロナ禍を経て不寛容で無関心といった風潮が…。

    舞台は、時代や場所を特定させないためにSF。しかし描かれているのは まさしく現代である。登場するのはカワウチ一家・王と大臣・財団で、そこには国民・為政・企業団体といった姿を重ねる。そして衣裳も それぞれ簡素な貫頭衣・上質な白服・黒スーツといった違いで表す。照明は薄暗い中で球体に光を灯す、そして鐘の音で一人ひとり退場(逝去)するラストシーンが実に印象的だ。
    次回公演も楽しみにしております。

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