街【公演終了!ご来場誠にありがとうございました!】 公演情報 ヲカシマシン「街【公演終了!ご来場誠にありがとうございました!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    徹底的にディストピア
    時空という抽象概念を介して人間の一生を切り取った前回の『背馳』に対し今回は、日々の暮らしのなかで直視する『街』を始点に、行き交い・立ち会い・そこ・に生きとし生ける人々の生き方・雑多な思考から時代/社会の闇と思わしき記号的・象徴的現象を半ば強引に徹底的につるし上げ投射・照合・弁証を行う。
    そうした上で、果たしてこれらは唯一無二の表現方法であったのだろうか。
    何かの模倣ではなかっただろうか。と問題提議を掲げた点が潔く、非常に頼もしい。
    『泣ける映画』に感動できない人、毎日の動労は辛いと感じる人、愛で地球は救えないとかおもう人、なんかはグッとくるポイントがきっとあるはず。今週末はアリスへゴーです。

    ネタバレBOX

    客席の通路側には舞台に向かって黒いテープが張られていて、その線からはみ出さないように開演前に諸注意がある。線の外側を観客が行ったり来たりするのだ。

    舞台の中心部は小さな横断歩道である。その周りに一段高い台がいくつか。
    上手側の斜め後ろには有刺鉄線のような黒い柵がひとつ。というだけの抽象美術。

    場所はどこかの『街』であるらしい。それは、あらすじ書きにある『新宿や渋谷』などの都会の雑踏。そこを行き交う人々の事象から生活、雑念などを時にモノローグ形式で淡々とつづっていく。

    冒頭、不特定多数の人々が行き交う雑踏を『模倣する』場面で通り魔事件が起きる。ナンバーガールのTATTOOあり(←だったとおもう)にあわせてそこら辺を歩いている人々が包丁でブスブスと無差別に刺されていく。これは言うまでもなく、秋葉原で起きた連続殺人事件の模倣であるとおもわれる。

    その事件の起きたすぐ近くの高層ホテルの屋上からは、
    人生に疲れたサラリーマンが間もなく自殺をする所だ。

    そんなことには無関心なまま、若者は街を闊歩する。
    愛がほしくて街をさ迷う女もいる。
    ホームレスは死んだフリして生きている。
    そうすることが彼の小さなテロリズムであるんだろうか。

    関係性を持たない彼らは時々、交差する。
    それは、よろよろと歩く薄汚いホームレスを颯爽と街を歩くビジネスマンがよける瞬間だったり、愛がほしい女と不思議な少女がだれかに『愛して』(←アイスと言葉仕掛けをするこ洒落たセンスあり。)ほしい気持ちに感応する瞬間だったり、冒頭の連続殺人事件だったり。

    やがて、彼らの交差は舞台というフィールドを越えて、舞台を傍観している私たちの背後にまで感染し、他人であるのに、彼らとすれ違う瞬間だけ他人ではないと錯覚させられる。観客席まで都会の雑踏の一部としてかき混ぜるこの演出方法には、心がざわついた。

    そして、実はこれらはすべて街という名の映画でワンシーンでした。』
    と劇中ネタばれする場面。これには騙されたとおもった。そういえば、この場面に至るまで、モノローグをする登場人物らがムード歌謡を歌うスターのように大げさなピンスポットライトがあたっていたのはなるほど、そうした理由があったのか。そして更に「あぁこれね。つまらんね。」と吐き捨てるとは恐れ入った。これまで紡いできた光景をあっさり否定してしまったのだ。そして何ごともなかったかのようにしれっと続きを再開させる。

    後半は、前半の雑然とした光景が目的意識を持った行動と他者との関係性を通じて、より具体的な主張として提出されていたとおもう。
    たとえば、自殺直前のリッチマンは、滞在するホテルの給士に与えたチップを
    与えた当人に破らせることで、『神のつくりものである金はヤワではない』という主張を給士に吐きかける。給士に限らず弱者いじめをしてきた彼は知の『巨人』アリストテレスを迫害した罪により、死刑宣告された。アリストテレスはホームレスの化身だったのか。と錯覚させる配役も絶妙だった。

    一方、愛を欲する女は広範囲に渡り、ふと目にとまったひとりの男性にわたしを愛してください・・・そう真剣なまなざしで語りかける。あんなまっすぐな目でみられたら誰でも動揺するんじゃないかとおもう。(こういうトラップの張り方もうまいとおもった。)

    また、人と繋がりたいと願ってはいるけれど繋がれないことも知っている少女は、『何が楽しくて生きている』のかわからないままどこかへ行ってしまった。

    カミュの異邦人に感化された青年はふたつめの太陽を見つけられるだろうか・・・?

    最後の『街』=システムが人を同質・均質化し、個を剥奪しているのではないだろうか、という推測。そして『私たちは幸福を前にして敗北してきた』というモノローグには胸がつまる想いだった。

    3

    2010/08/27 22:46

    0

    0

  • Hell-seeさま、この度はご観劇頂き誠にありがとうございました。
    ヲカシマシンはまだまだ発展途上の未成熟な団体ですので、
    このような皆様からの感想・劇評・コメントが、私達の創作の大きな原動力となります。
    より良い作品作りを目標に誠実に邁進してまいりますので、
    今後ともヲカシマシンをよろしくお願い申し上げます。

    2010/08/30 23:57

    みささま

    コメントありがとうございます!
    満足度はまったくの私見ですので不安な気持ちでいっぱいですが、
    みささまのお気に召されるとうれしいです!

    2010/08/28 03:41

    ワタクシもこれは観に行きますよん♪
    評価が高くて安心しました。

    >。『泣ける映画』に感動できない人、毎日の動労は辛いと感じる人、愛で地球は救えないとかおもう人、なんかはグッとくるポイントがきっとあるはず。

    上手い!つまり、内向きなタイプにグッとくるのね。笑

    2010/08/27 23:59

このページのQRコードです。

拡大